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ああくそ、いい匂いする。
敦君が云っていた乱歩さんの匂いってこれの事か。キツくない柔軟剤と柔らかい太陽の匂い。
崩れる前髪なんて気にせずに頭を擦り付けると、一向に乱歩さんがページを捲らないことに気が付いた。
『…?』
1回中断して、見上げると
本を開いたまま、先程まで一切他を見ていなかった目が大きく見開かれて私を見つめていた。
少し動揺しているのか瞳を揺らして、心做しか顔もほんのり赤い。
謎の作家さんもそんな乱歩さんの様子に唖然としていた。
もしかして相当失礼な事をしてしまったのでは
『…あの、乱歩さん……?えっと』
「き、君、随分猫みたいな事するな…、こっち見るな。」
わけも分からず顔を赤くしていたのに、また本に視線を向けてぶつぶつ文句を言い始めた。
不覚だ、だの突飛なことをしやがって、だのなんだかよく分からないが勝利した気分になる。
未だ押さえつけられている頭は遠慮など知らずに、乱歩さんの肩に寄りかかっている。
心地がいい。
*
段々と会話が少なくなっていき少しウトウトしてきた頃。
もしかして肩を貸してくれているのは寝不足の私を気遣っての事だったのでは?と思い、少しだけ心が温かくなる。
流石名探偵、全てお見通しですね、少しだけ尊敬します。
「ん、眠い、嗚呼、そういえばポオ君、この前僕が言っていたあれ、出来てるの?」
「勿論だ乱歩君!これである。ちなみにその本はどうであるか?」
「ん〜眠くなるね、だけどまぁ作風としてはいいんじゃない?それ貸して」
「ね、眠くなる……」
ほぼ閉じかけている瞳で、乱歩さんが受け取った本を見る。題名はよく見えない。
私の目が動いたのに合わせてかタイミングよく本を開いた。
すると突如本が眩い光を上げてふわっとページが勢いよく舞った。
眠気なんてその景色で一瞬で吹っ飛んでしまい思わず目を奪われる。
「よしよし、さて楽しめるかな?」
『な、何これ、異能?!』
「A、僕から離れないよーに!」
『え?!は?!体が!』
下半身が塵になっていき、横で怪しげに笑う乱歩さんを節目に私の意識は無くなった。
なんだか前に座っていた謎の作家さんがやけに私に哀れみの視線を送ってきていた気がする。
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時