ハイ・ライフ《Takuya side》 ページ19
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「緊張したぁぁあ………」
助手席で大きく息を吐く千里。紅里さんへの挨拶から数日、今日は俺の実家に来て挨拶をした。
江「緊張したのは俺のほうだって。あんな父さん初めて見たし」
「でも、優しそうなご両親だったよ」
江「そうか?」
「そうだよ。さすが拓也のお父さんとお母さんってかんじ」
江「………これであとは社長か」
「怒られるかなぁ」
江「怒られはしないだろ。いや、そっちの社長知らないけど」
「そう言えば拓也って妹いたよね。どの辺にいるの?」
江「あぁ、あいつには電話で話したよ」
「え!いつの間に?私から言わなくてよかったかな……」
江「なんでだよw そういうとこはほんと男前だな」
「ちなみに、なんて言ってた?」
江「あー、『え、お兄ちゃんに彼女どころか結婚相手?……してくれる人いたんだぁ。私おねえさん欲しかったんだよね、今度紹介してよ』」
「き、緊張するなぁ」
江「東京住んでるからいつでも都合は合うだろ。
そのうち紹介するよ」
「わ、わかった」
江「………」
「………どうした?」
視線に気づいたのか『ん?』と首を傾げている。
江「うんん、なんでもない」
「なんだよ、気になるだろ〜」
わざと拗ねたような口調で唇をとがらせた千里の頭を、
クシャクシャっと撫でる。
才色兼備で、いつも明るくて、周りにいる人みんなに優しくて、芝居に対しては誰よりも真っ直ぐで、真剣で………。
彼女にはいい所がたくさんある。
優柔不断で、たまにバカで、自分のことには鈍感でお人好し、泣き虫なくせに笑って誤魔化そうとしがち……。
彼女の欠点だって愛おしい。
変わり続けるこの関係にたくさんたくさん悩んだけど、今、こうして隣にいられてる。それがどれだけすごいことか、奇跡的なことなのか、最近はよくそんなことを考えてるよ。
全てを理解して尊重することは出来ないかもしれないけれど。俺らの意見や考えをみんながみんな受け入れてくれるわけじゃないだろうけど。
それでも、たくさんの人に愛されて、たくさんの人に笑顔を届ける君の、小さな夢を一緒に叶えてゆきたい。
それはきっと、変わらないから。
初めて天使に会った、あの瞬間から───
───
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時