ブラッドアンドサンド ページ12
「例えばです」
梶「うん、例えばね」
「梶さんの大切なものが目の前に二つあって、『どちらかを取れば、反対側を傷つけてしまうかもしれない』としたら、どうしますか?」
運ばれてきたビーフシチューのポテトとにんじんを刺して言う。梶さんは『うーん……』と唸って、顎に手を当てて真剣に考えている。
やがて顔を上げ、ハッキリした声で言った。
梶「………俺なら、どっちも半分ずつ手に取るかな」
「半分ずつ……ですか?」
梶「どっちも大事ならどっちも傷つけたくはないし、どちらも手放したくない。それでも全部を抱えきれないなら、俺は半分ずつ持っていくことにするよ」
「それって、ずるくないですか……」
梶「ずるくないよ。もしずるだとしても、ほんとに大切なものならそれくらいやったっていいと思う。だってどっちも諦めたくないんでしょう?」
「………でも、そんなのは私のわがままでしかないんですよ。許してくれませんよ」
梶「卯月は誰に許してもらおうとしてるの?」
「………大切の人に愛してもらって、その人のことを好きな人にまで好きでいてもらおうだなんて、虫が良すぎるじゃないですか」
梶「そうかな」
「そうですよ!だから、初めから言わなければ……」
梶「それこそずるなんじゃないの。最初から言わなければ、そんなの知らなければ、傷つかずにすむ………なんてそんなのはただの言い訳だ。自分を守るための保険だよ」
「………っ……怖いんですよ。嫌われるのが、拒絶されるのが、また失敗して、何もかも失うのが………怖くてたまらない……」
必死で堪えながら吐露する言葉を、梶さんはしっかり受け止めてくれる。
だから、そんな顔しないでよ。どうしようもなく頼ってしまうから。
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時