陸拾肆 ページ16
今更遅いとわかっていても反射でペラッペラの笑顔をはりつけてみせる。
「もちろん、今は彼氏の志麻さんが一番ですよ〜」
志「………目、つむってくれる？」
「………強制？」
志「お願い」
「………はぁ」
やっぱり許されはしないようだ。そりゃそうだ。彼が嫉妬深く独占欲が強いことは知っていた。知っていたはずなのに私が煽るようなことを言った。完全に私の落ち度だ。
低いトーン。笑顔が消えた表情。薄暗がりで妖艶に光る瞳。きっとファンの子なら発狂ものなんだろう。
私の胸と脳に浮かんでくるのは罪悪感と自分への嫌悪。吐き気がしてしまいそうなほどの自己満な関係に嫌気がさす。
『おれを言い訳にしなよ。忘れさせてあげる』
欺瞞の代償は、韜晦の犠牲は、悪辣の対価は……。
しばらく目を見つめた後、ゆっくり目を閉じた。横髪がすくわれる。人が近づく気配がする。熱い吐息がかかる。瞬間、頬にヒヤッと冷たいものが触れた。
「え……」
びっくりして思わず目を開けると、志麻さんは変わらず笑ってない。「綺麗な目」と場違いなことを呟くと、志麻さんはゆっくり口を開く。
志「従順ちゃんは嫌いやないけど、Aに関しては無理やりってのはせんことに決めてるから」
「どうして………」
志「『どうして』？ 大切にしたいからに決まってるやろ」
「………私も利用してるんだから、貴方も利用すればいいのに」
志「そんな寂しいこと言うな」
眉を下げる志麻さん。しまった。こんな顔をさせたいわけじゃない。結局この人も優しい人だってことを忘れてた。助けてくれているのに、片棒を担いでくれてるのに、困らせたり嫌な気持ちをさせたいわけじゃないんだ。
「…ごめんなさい」
志「うん。でもやーっぱ他の男と飲んでたり、嬉々として男のこと自慢してるのはムカつくからぁー」
「それは最初に断り入れたじゃないですか…」
志「分かってるからってムカつかないとは限らないでしょー？」
「そんなこと言われても……」
志「…ってことで、晩餐付き合って？」
頬にあてがっていた氷入りのグラスをからんころんと揺らして私に差し出した。酒に酔えないことも、酔ったフリして忘れることも、きっと彼は見透かしているんだろう。眠れない。眠れない。どうせ今夜も眠れないなら……。
「お手柔らかに」
そう言うとやっと志麻さんは笑ってくれた。
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ななき。(プロフ) - るるるさん» そういう事でしたか！いえいえ、ご指摘助かるんでうれしかったですよ。他の作品もよろしくお願いします！ (2021年6月5日 13時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - ると同一人物なんですけど、、、なんかこちらの端末のバグだったみたいで他の端末でみてみたら普通になってましたほんとに申し訳ない。。。 (2021年6月4日 23時) (レス) id: c7e16937c6 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - るさん» うぉっつ…ご指摘ありがとうございます…。どの話か教えて下さると大変助かりやす…。 (2021年6月4日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
る - 主ちゃんの名前Ａになってますよ(ﾎﾞｿｯ) (2021年6月4日 17時) (レス) id: 69a285c503 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ありがとうございます！応援を糧に精一杯最後まで頑張らせていただきますね！ (2021年3月6日 14時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年3月5日 13時
