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低い声の姫君/※作者より ページ50

自販機横のベンチで缶のオレンジジュースを飲んでいると、ふらっと江口が現れた。プシュッといい音を鳴らせ炭酸を飲み、気だるげな声で聞いてくる。




江「随分苦労してるな」

「まあね。……よくわかんないんだよね、気持ちが」

江「主人公の?」

「姫と少年、どっちも。掴めないっていうか理解できないっていうか……」

江「台本読み、付き合おうか?」

「え、いいの?」

江「おれのセリフ少ないし、それくらいなら良ければ」

「よっしゃ、頼んだ。じゃあ私がキーラのセリフ言うから、姫の方よろしく」




「『数年越しになっちゃったけど、たしかに頂きに来ましたよ』」

江「『………キーラ…』」

「『ガーネット、こんな所にあったんだね』」

江「……『キーラ、迎えに来てくれたの?』」

「『僕は、お宝を盗みに来ただけだよ』」

江「『そんなこと言って、私を連れ出しに来てくれたんでしょ?待ってたよ、ちょっと遅いんじゃない?』」

「『………ずっと、ずっと後悔してた。あの時あんたの手を掴んで攫ってしまえてたらどんなにいいだろうって。
……でも、僕は海賊としても男としても一人前じゃなかったから……』」

江「『わたしはそれでも連れ出して欲しかった』」

「『……ごめん。僕は家族を知らないから、友だちを知らないから、恋人を知らないから、……怖かったんだ。あんたの未来を僕が潰してしまうことになるかもしれない。あんたの幸せは僕といることじゃないはずだって』」

江「『………キーラ、わたしの幸せは私が決めるわ。わたし、キーラに言いたいことがあるの。あの時言えなかったことがあるの』」

「『……うん。僕もずっと、言いたかったことがある』」

江「『……私は』」

「『僕から言わせて。あんたが、あんたのことが……』」




風が後ろから駆け抜けていき、近くの木々が揺れる。

数十センチの距離に江口の顔がある。スっと伸びた鼻筋、開けかけている口、ふわふわと揺れる髪。

ゆっくり彼の顔を見たことが、いったいこれまであっただろうか。やっぱりよく見ても整っていることには変わりないのだが、今までに見たことのない真剣な瞳に少したじろいてしまう。



私を見る江口の瞳には、私は今、どう見えているんだろう………。






◇◇◇





※作者より



たくさんのお気に入り、評価、ありがとうございます!!!
続編いかせていただきます!

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ななき。(プロフ) - 春さん» こちらにもコメントありがとうございます!これからも気長にお付き合い下さい! (2019年10月20日 13時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
- 新作おめでとうございます!応援してます!(^-^)v (2019年10月20日 10時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年10月19日 21時

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