はずだから ページ42
「………あ、良ちゃん、おかえり」
良「た、だいま」
「どうかな？髪伸ばしたし、ファッションも清楚系？ってやつにしてみたし、ピアノも頑張ったけど。……どう？女らしくなった？」
良「……ぁ、うん、いいんじゃない？どっかのお姫様みたい」
「ははw 良ちゃんがそういう冗談言うの珍しいねぇw」
良「その調子なら、──も振り向いてくれるんじゃないか。今は高校の受験勉強で忙しいから、合格発表の日にでも告ってみたら？」
「ほんと？良ちゃんが言うなら間違いないね！頑張ってみる！」
良「……おう」
良「あ、A、どうだった？なんですぐ連絡くれねぇんだよ。ホウレンソウは鉄則……」
「……だった」
良「え？」
「………ダメだった！」
良「……ぇ、どうして……だってあいつは……」
「『好きだよ』って言ったら、『僕も大好きだよ』って、『僕らのかわいい妹だ』ってそう言ってくれたんだ……。
……私、それ以上言えなくて……どんなに頑張っても、どんなに大人になっても──くんの中ではいつも私は妹なんだ……」
良「………」
「ごめんね、あんなに協力してくれたのに……ごめん…、無駄になっちゃったや……」
▪□▪□▪□▪
それからしばらくろくに話もせず、──くんは地元の市立の進学校へ入学した。
その1年後、私は良ちゃんと同じ都内の県立高校を受験し、逃げるように地元を離れ、一人暮らしを始めた。
腰まで伸ばしていた長い髪をばっさりと切り、メンズファッションを好んできるようになった。
良ちゃんはすっかり人当たりが良くなって、男女問わず人気者。なんでもズバズバいう性格を隠し、猫っかぶりになっていた。
私も人を避けることばかり覚えて、信用せず、信頼せず、深く付き合わないようにしてきた。表面上だけの関係。上辺を取り繕って、その場限りの関係を保っていた。
良ちゃんとまた話すようになったのも、実を言うとここ数ヶ月のことだ。
「今頃、何してるかな……」
帰省はしばらくしてないし、もうきっと会うこともないんだろうけど、あの頃の甘く苦い気持ちはほんのりと胸に残っている。
酸っぱい初恋だった。『そんなこともあったな』…って、たまにふと思い出すくらいの子供の頃の淡い記憶だ。
とっくにいい思い出になったはずだ。はずなんだ……。
もうちょっと寝よう。明日、いや今日はバイトも入れてるし、一週間もすればまた学校なんだから。
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ななき。(プロフ) - 春さん» こちらにもコメントありがとうございます！これからも気長にお付き合い下さい！ (2019年10月20日 13時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 新作おめでとうございます！応援してます！(^-^)v (2019年10月20日 10時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2019年10月19日 21時
