【文スト】●依頼人だったんですけど●【太宰治】

〈12〉モヤモヤ？ ページ12

『私も少しずつ太宰さんのことを知りたいと思います。』


「本当かい！？」


子供みたいに目がキラキラしてる。


『ちゃんとした理由がないと、お断りも出来ませんから。』


「え、何それ、振る為みたいじゃない？」


『ふふ。』


変な人だなぁ。


「ふふ、良い時間だなぁ。」


ふと目の前にシャボン玉が3つ現れた。


テーブルの上の焼酎瓶に当たって割れた。


お酒でも注いであげようかと瓶に手を伸ばした。


「あ、太宰さん！」


女の人が声を掛けてきた。


知り合いの人なんだろう。


「また一緒に飲みたいと思ってたのに、連絡先も知らないから探してたんだから！」


「えー、悪いけど私はこの子だけだから。」


え、何か巻き込まれた感は気のせいだろうか。


「またまたー。じゃあまたね！」


綺麗な人だったなぁ。


『お友達ですか？』


「んー、知り合いかなぁ？」


何故に疑問形？


まぁいいや。


手に取った瓶の蓋を開けて太宰さんのコップの方へ傾けはじめれば


「太宰さん！また此処にいた。今日はその子？心中は出来ないけどまた飲んでね！」


先ほどとはまた別の女性が一方的に話して手を振りながら去っていった。


傾けていた瓶を自分の前へ下ろす。


ちょっと待って。


気になる言葉があった。


今日はその子？。
また飲んで。


もしかして・・・


『色んな女性に声を掛けてるんじゃないですか？』


「いやぁ、あははは。それは過去の・・・」


気不味そうに笑っているのは肯定でしょ。


自分のコップに焼酎を注いで一気に飲み干す。


「ちょ・・・Aちゃん？」


お金をテーブルに置けば


「何の演出？」
「綺麗！」
「誰かのサプライズ？」


店中に沢山のシャボン玉が現れていた。


ただ、私にはどうでもよくて。


『さっき言ったことは無駄になりそうですね。色んな女性に好きと言っているのでしょう。真面目に返した私が恥ずかしいです。』


穴があったら入りたい。


太宰さんのことを知りたいなんて言ってしまった。


「違うんだよ、Aちゃん。確かに過去には色んな女性に声を掛けていた時もあった。だけど今、Aちゃん以外は・・・」


『そんな言い訳はお付き合いしている人にするものだと思います。今日はありがとうございました。また明日、職場で。失礼します。』


シャボン玉多すぎ。


前が見辛い。


何で怒って・・・怒って？


私なんでこんなモヤモヤしてるみたいになってるんだろう。

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