黒服の秘密のお仕事

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宴会ホールの他に
カフェとBARにヘルプで入る事がある
派遣なので、部署の垣根が無い

カフェには
ルームサービスの配達要員
見込んだ数のバイトでは足りない時のヘルプ

BARには主に
暇だと見込まれる日に入る


バイトに入った子が出勤したのに
途中で暇だから帰れって
生活出来なくなる

人件費削減ですね


宴会ホールも埋まりにくい
月曜日

いつも通りBARに出勤する


黒服のジャケットだけ脱いで
黒いベストとギャルソンエプロンをつけて

BARに合うように髪をセットして
少し濃いめにアイラインをひく


高層階で夜景が見えるカウンターと
バーテン側のカウンター
奥にはVIPの個室がある


20時前

「おはようございます」
「お、来たな」
「挨拶くらいして下さいよ。浜田」
「お前が俺を 浜田様 って呼んだらね」

店主の浜田とお約束の挨拶して

「今日、ちょっと知り合い来るんだわ。でも俺シフト作ってっから来たら呼んで？」
「何時でどなたですか？」
「時間は知らね。キラキラ人が来る」

芸能人か…

「ちなみに浜田が手をつけた感じ？」

チャラ男だし修羅場は勘弁したい

「いんや、男ひとり」
「浜田が手をつけた感じ？」

「…お前、俺を何だと思ってんの？」
「人たらし浜田チャラ男」
「しばくぞ」

いや実際そうでしょ

男も女も
芸能人めっちゃ連れてくるし

同じだけ女のトラブルも連れてくる

「大坂くんを見習ってよ」
「お前、大坂が好きだねー。アイツもタラシは一緒じゃん」

大坂くんもBARの顔役で
めちゃくちゃ優しい
お客様に凄く人気なのに
浜田と違って女性トラブルはほぼ無い


「あの色気で全部許す。月曜日は大坂くんとにしてよ」
「お前と大坂じゃここがキャバかホストになるから嫌だ」
「失礼な。ならないよ。ほら、キラキラ人来たら連絡するから」

しっしっと追い払う

浜田はだいぶ年上で
新人時代によく相談に乗ってくれた

気安くなった
小生意気な態度の私に怒らない
他の誰にも怒らない


チャラ男だけど仕事は優秀で
自然と懐に入る男

邪険に扱えど
皆この人に可愛がられたい

尊敬してるなんて口が裂けても言わない





夜景の見えるカウンターに座っている
男女のお客様たちを視界に入れつつ

グラスとボトルを磨いていく






21時40分過ぎ
最後の一組も帰られた頃


「遅くなってすみません」



「お待ちしておりました…神宮寺様」

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