黒服の秘密のお仕事

39 ページ39

「ゆうさん
今…仕事中…？」

聞かれて
仕事の義務で逃げないと思われてるのか
と思って

「自分の意思です」

と伝えた
確かに嫌ではないし

紫耀くんを拒もうとは思わない

実際抱きしめられてすごく嬉しいし
何ならパッと離れた一度目では

もっと
と思ってしまった

少し位いいかな、と思って
そっと背中に手を回そうとしたけど
紫耀くんが先に動いて…

…え？
何でお姫様抱っこ？

「…軽っ…」

紫耀くんが呟いて
そのままソファに座った

私を抱っこしたままで


軽く思考が飛ぶと
私の背中を支えたまま腰に手がまわり
ガッチリ固められ

反対の手でスっと手を取られ

「指先…可愛い」

声が聞こえると
親指で手の甲をなぞって、そのままするりと指先まで辿って小指から絡め取られる

大きな手になぞられて

私の手が紫耀くんのと絡まってる
…その見た目と温もりに
手以外の場所もゾクゾクする


そっと手を下ろされ
今度は頬に手が添えられる
紫耀くんの顔が間近にあって目線だけ逸らしても視界に入る

伏せ目がちにじっと見つめられ

唇をふにふに確かめるように動く指先は
何の他意も無さそうに

…無い…よね…

少し下がったまつ毛から覗く瞳が
逃げられない色気を放っていて


このままならもぅいっそキスして欲しい

心臓の音が響く
どうにかなってしまいそうなのに
して欲しいのに


そう思ったのに
ゆっくり手が離れてキツく抱きしめられて頭の上で長い、長いため息をついている


え？何？
何か考え事してるの？

出来ればその考え事を声に出して欲しい
あちこち撫でられて

…心臓がはち切れる

私も触っていいのかわかんないし


ため息がひと段落ついたら
ツムジから
ちゅっ
と聞こえて

ななななななななな…

そのまま腰を引き寄せられて
もっと密着して
香りで…

頭がトロける…

顔をそっと横向きに誘導され

耳を指先でくすぐるように
形取るように描いていく

「…っ…」

優しい刺激に息をのむ


そして
うなじも辿るように指が流れて


考え事されながらなんて嫌だ



「紫耀くん…紫耀くん…」

声をかけながら
ペチペチと胸を叩く


例え紫耀くんにでも
私だと認識してないのは


嫌だ

40 side紫耀→←38 side紫耀

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す