黒服の秘密のお仕事

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ホテルの宴会ホールで
働いていると
色んなお客様が色んな事で困ってる場面に
遭遇する

そんなお客様の為に作られたお助けシステムのひとつ

〈 お声がけシステム 〉


利用できる人が限られていて
システムが知られると都合が悪いので

知ってる人は皆、秘密にしてくれる

ほら、あそこにも利用されてる方がピンチのお時間です
さっそくお声がけしていきましょう

お客様の正面、目に入る位置から近づく

目が合って軽く頷いたのがわかったので
不自然にならない程度に方向転換する

お客様の後ろにまわり
対話相手から見える位置から近づいて

「お話中失礼致します。平野紫耀様、お電話が入っております」
「あ！そうなんですか？…事務所かな…すみません、ちょっと行ってきます…ほんとすみません、またね、セイラちゃん」

「こちらでございます」

失礼にならない距離で先導する私の後ろで
もう一度相手を振り返って
申し訳なさそうに頭を下げてからついてくる
平野紫耀様


そう
長々と同じ相手に捕まってる方から連れ出す
お声がけシステム


女性アイドルは事務所側が警戒して監視するマネージャーがついてる事が多いので利用されていない

だけど男性アイドル
特に新人でグループの方はマネージャーが個々に付けず、抜け出す口実を作り出せる器用な方が少ないから
と事務所側から相談された事がキッカケで作られた


そんな中
King&Princeの平野紫耀様は、デビューされてからこのシステムを利用されている

他のアイドルの方は、その時々のパーティ内容や参加メンバーを見てから利用されるか決めるけど

平野紫耀様は断ることが苦手なのか

新人で無くなっても後輩がデビューしても
毎回利用されている


会場のドアを開けてお通しして


「それではいつもの控え室にドリンクお持ち致します」

一礼して顔をあげた時に

「いつもありがとう、平野さん」

ふわっと微笑まれる

私も最上の微笑みで

「ごゆっくりお過ごしください」



私、平野ゆう が一番好きな会話だった

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