【ホワイトデー】01(兄) ページ4
ｰｰｰｰ
兄者さん、気付いてます？
もしかして忘れてます？
今日、ホワイトデーなんですけど。
｢まじでクリアできない･･･。
A、コーヒー飲む？｣
｢うん｣
兄者さんは今夢中になってるゲームが
クリア出来ないのか気晴らしにとリビングに来て
コーヒーを淹れている。
いつもと変わらない日常。
今日がホワイトデーということを除いては。
｢ん｣
｢ありがとう｣
差し出されたカップを受け取って一口。
あーにがい。
私の気分もこのくらいだ･･･。
バレンタインの時はあんなに数日かけて
こそこそフォンダンショコラの材料買ってた兄者さん。
なのに･･･。
なのに！
忘れますか？お返しの日を。
別にお返しが欲しいわけじゃないんだけど。
あれだけバレンタインはしっかり覚えてたのに。
｢どうした？｣
｢ううん、なんでもないよ。｣
｢ふぅん･･･｣
気づいてないな、これは。
夜ご飯の時も何にもない。
お風呂のあとも何にもない。
(兄者さん！もう寝るだけです！
もう今日が終わっちゃう！)
｢はぁ･･･｣
少なからず期待がなかったわけじゃない。
もしかしたら、なんて思ってたのも事実。
(期待しすぎはよくないなぁ･･･)
そう考えながらベッドに入る。
あとから兄者さんも入ってきた。
二人分の体温ですぐに布団の中が温かくなる。
｢A･･･｣
兄者さんの腕が体に回って引き寄せられる。
頬や額、唇に何度もキスをしてくる兄者さん。
｢え、ちょっ･･･と･･･どうしたの？｣
普段こんなことしないからびっくり。
頬ずりをしながら兄者さんがクスクスと笑う。
｢だって今日ホワイトデーじゃん｣
｢あれ、覚えてたの？｣
｢は？！当たり前だろ｣
いやいや、だってなんにも･･･。
その言葉は重なった唇にかき消された。
｢バレンタインの時は
Aがフォンダンショコラ作ってくれたから。｣
｢うん｣
意図が全然わかんない。
｢だからホワイトデーは俺がお返しする｣
｢うん？｣
最後まで聞いても全然わかんない。
｢普段こんなにイチャイチャしないけど
今日はイチャイチャする｣
お返し、めっちゃ考えた、と言葉を続ける兄者さん。
｢そうなんだ？｣
｢うん、だからAは好きなだけ甘えていいから｣
斜め上からのお返しに一瞬呆気に取られたけど
兄者さんなりに考えてくれたから
すごく嬉しい。
この時間は買えないから。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年3月12日 0時
