【夢でもし逢えたら】08(弟) ページ19
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あの日からいくら眠っても
弟者くんに会うことはなくなった。
最初のうちは、今日こそはと意気込んで眠りにつき
また会えなかったと落胆して起きる毎日が続いた。
だけどそんな日が何日も続いているうちに
それにも慣れてきた。
｢え･･･届け物？｣
そんなある日、母親に届け物を頼まれた。
特に予定もない私は帰りに買い物でもしようかな、
なんて考えながら家を出た。
届け物を終え、駅に向かって歩く。
｢30分後かぁ･･･｣
駅の掲示板で次の便を確認。
次の便まではまだ時間がある。
構内にあるベンチに腰を下ろし、ふっと一息。
晴れているのもあってか
日差しがポカポカして気持ちいい。
少し微睡み始めた時、
隣に人の気配を感じて目を開いた。
でも駅でベンチに人が座るなんて当たり前にある。
特に気にもせず気持ちいい日差しに身を任せて
再び目を閉じようとした時、
聞き慣れた声が聞こえたような気がした。
｢･････････｣
そんな訳はない。
聞こえるはずがない。
｢A｣
あぁ、私疲れてるのかな･･･
幻聴が聞こえるなんて。
｢A｣
やだ、幻聴だけじゃなくて触られた感覚も･･･
(え･･････今、肩に･･･)
触れられた肩の方にゆっくりと視線を向ける。
｢うそ･･･｣
｢嘘じゃないよ｣
そこには何度も夢で会った弟者くんが微笑んでいた。
｢やっと会えた。｣
｢会えたって･･･｣
だって、もう会うのは終わりにしようって･･･
続けようとした言葉が途切れる。
｢ごめん、いつも俺が言葉足らずで･･･
あの時も、その前の時も。
もっとちゃんと伝えられたら｣
｢どういうこと？｣
｢夢で会うだけじゃ足りないってこと。
現実で、今みたいにAに会いたいって
言おうとしたんだけど｣
そこで弟者くんが言葉を詰まらせた。
｢前の夢の時もそれを言おうと･･･？｣
｢うん、だけど伝えきれなくて
Aを困らせちゃって。
夢で会えなくなってからも
ずっとAのこと考えてた｣
｢ずっと考えてたら夢で、
別の夢のAに会ったんだ。
そしたら今日、ここの駅に来るって教えてくれて。
それでここに来たらAがいたんだ。｣
｢そうだったんだ、だからここに･･･｣
｢A｣
ぎゅっと握られる手。
手首につけたレザーのブレスレットを撫でる指。
真剣な瞳から目が離せない。
意を決したように弟者くんがゆっくりと口を開いた。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年3月12日 0時
