YouTuberの友達です。 5 【東海オンエア】

春 ページ44

「すー、はぁ…」



生温く、湿った空気を肺いっぱい吸い込む。



真冬の枯れ草の匂いとは違っていて、この青い葉の匂いはもう既に春が訪れていることを知らせていた。



たまに吹く強い風がざわざわと土手の草むらを揺する。



あ、やべ、スカート捲れる。



強風に耐えようとスカートを必死に押さえていると、後ろから肩を叩かれた。



ゆ「ふふ、何してるの？笑」



「おおおー！」



振り返るとにこにこのゆめまるくん。



学校帰りにゆめまるくんと会ったの、久し振り。



ゆ「学校帰り？」



「うん！今帰ってきてん！」



ゆ「そっかそっか、お疲れ様」



それから、ゆめまるくんは手に持っていたパーカーを私の腰に巻いてくれた。



優男すぎぃぃぃぃ



これは後世に語り継ぐべきだと思います。



「ゆめまるくん寒くない？」



ゆ「や、寒いと思って厚着したら全然暑かった」



「思ったより暖かいもんね、今日」



ゆ「もう春だから」



持つよ、とゆめまるくんが私の手提げカバンを奪って楽しそうに笑う。



ご機嫌さんなゆめまるくんはほんまに誰が見ても可愛いと思うわ(溺愛)



そのとき太陽が雲から顔を出して、陽気が辺りを包みこむ。



心までぽかぽか。



ゆ「今日はてつやん家行くの？」



「直接行こうかなと思って」



ゆ「としみつが変な目で見そう…」



「それある、ゆめまるくんのスカート姿見ただけで興奮してたもんね」



ゆ「気を付けて」



「これ聞かれてたらボコボコにされてまうわ…」



ゆ「…想像するだけで鳥肌立っちゃった笑」



「こーわっ」



腕をさするゆめまるくんと笑い合っていたとき、誰かが私とゆめまるくんとの間に割り込み、私の肩にゆめまるくんのではない腕が回ってきた。



背筋が自然と伸びる。



恐る恐る隣を見れば、さっき二人で『今会ったらやばいねー』とか呑気に話題にしていた人。



「…としくん」



ゆ「…いつから？」



と「あっ、Aとゆめまるいんなぁ、声掛けようかなぁ、って思ってたらよぉ、…」



と「うし、お前ら後で覚えとけよ」



にんまりと口の端を上げて満足げに私とゆめまるくんを交互に見るとしくん。



今日も楽しい放課後が始まります。



「…ゆめまるくんいつ逃げる？」



ゆ「とりあえずとしみつを腹パンして…」



と「おい、せめてもっとこそこそとやれ」



「とりあえず『好き』って言っとく？」



ゆ「それがいいかも」



と「軽い、軽いなぁ」

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