episode20 ページ20
御幸
御「礼ちゃんごめん任せて、代わるよ」
練習が終わり、とりあえず着替えてAの部屋に向かう
久しぶりに足を踏み入れたその部屋は、Aの匂いに包まれるようだった
礼「寝不足、疲労、ストレス…だそうよ」
御「……だろうね」
ベッドの上で眠るA
だいぶマシになったものの、まだ苦しそうに眉間にシワを寄せている
手に持っている、今日またナベから預かったノートを思わず握り締めた
相変わらずの情報量
身を削って、毎日書き続けてるんだろうなって思ってた
御「今日さ、ノック打ってる時…ちょっと変だなとは思ってたんだよね」
日射しは強いにしても、汗の量が変に多くて
笑ってんのに、どこか無理してるようで
御「そんだけ…気づいてたのに……」
こうなる前に止めてあげられなかった自分が悔しい
礼「……あなたたちに何があったか知らないわよ」
「けど、止めたって無駄な気もする」
御「え?」
礼「だってこの子、あなたに似てるもの」
「やるって決めたらやる…頑固なところとかね」
御「ははっ…そうかな」
礼「えぇ…それに、この子ね……最後あなたにキャッチャーフライ打つときが、一番嬉しそうなのよ」
そう言って部屋を出た礼ちゃん
2人きりの部屋に、Aの荒い息遣いだけが響く
そっと頭を撫でてやると、少しだけ楽になったような顔をした
手を握ると、そこから熱が伝わる
小さな手
幾度となく、俺を助けてくれた
御「なぁ、A」
おまえに何があったか知らないし
おまえが何考えてんのかも知らない
けどさ……
御「俺にはおまえが必要なんだよ」
一番近くにいてほしいんだよ
懇願するように紡いだ言葉に返事なんてない
ただ、眠る姿を見てるだけしかできない
コンコン
「御幸先輩、いますか?」
そっと控えめに開けられた扉が開けられる
御「湊月……?」
そこには、どこか暗い顔をした湊月が立っていた
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作者名:玲海 | 作成日時:2020年2月13日 22時