口裏合わせ ページ25
・・・
「……本っ当にすみません。ほとぼりが冷めるまで、恋人のフリをしてもらえませんでしょうか……。」
現在、私は昴さんに諸々の事情を説明していた。なんでも、あの後透さんと別れたことや私に昴という新しい彼氏ができたことを、他でもない彼自身に言われてしまったのだ。おそらく、降谷さんなりの応援なんだろうけど。
仕事でも、降谷さんは私のプライベートをやたらと優先させてくれた。もちろん、やることはやらなきゃいけないんだけど、残業の量が減った気がしてて。どことなく距離も置かれてるみたいだし、唯一の接点の仕事ですら任せてもらえない。
「ホォー……、それはまた嬉しいお話ですね。」
「えっ?」
「忘れましたか?私はあなたに好意を抱いているんですよ。……こんなチャンス、願ったり叶ったりだ。」
「……なっ、何言ってるんですか!というか!誤解解くっていいましたよね!?」
そうだ。新ちゃんの突飛な話ですっかり忘れていたが、有希子さんにはちゃんと説明すると言っていたはずだったのに。
昴さんは笑って、反省のかけらもないような謝罪を続けた。その様子は、まるで彼がわざと何もしなかったようにしか思えないほど。勿論、私の主観は入っているわけだけれども。
「……まあとりあえず、私が失恋を吹っ切れるまでは、よろしくお願いします。話、合わせるだけでいいので。」
それじゃあ、と立ち上がりドアに手をかけた時。
「ところで……、」
と、昴さんが言ったかと思えば、私の手の上には彼の男らしい手が重ねられていた。すでに夕食のことを考えていたこともあって思考も追いつかず、いつも以上に動揺してしまう私を見て、昴さんはにっこりと笑った。それはそれは素敵な笑顔で。
「デートの日はいつにしましょう?」
「いっ、や……、で、デート、するんですか!?」
「ええ。曲がり成りにも恋人ですし、お互いに話を合わせるなら一度くらいは行っておいたほうがいいかと思いましたので。」
「でも、あの、そこまでしなくても……。」
別に昴さんが嫌な訳じゃないけど、降谷さんとのことがあってすぐなのに簡単に昴さんに絆されてしまうことが怖かった。実際、先日もすぐ慰められたし。私がやんわり断っているのに、昴さんは全く気づかず、いや気にせず続けた。
「遠慮しなくても、私は少しも迷惑だなんて思っていませんよ。うーん……、そうですね。じゃあこうしましょうか。」
彼はうんと頷き、にこりと笑った。……嫌な予感しかしない。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (4月27日 22時) (レス) id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
天然石 - 続き書いて (2021年11月11日 19時) (レス) @page30 id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
焼きプリン - とても面白くて今日一気見しました!!!続きがとても気になります!楽しみにしてます。頑張ってください! (2021年3月25日 20時) (レス) id: ecb566eb91 (このIDを非表示/違反報告)
す だ(プロフ) - 頑張ってください!たのしみにしてます (2020年7月14日 2時) (レス) id: ebbf33f874 (このIDを非表示/違反報告)
月乃(プロフ) - 花束さん» ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります!頑張ります! (2020年4月24日 12時) (レス) id: 34cc67c93b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月乃 | 作成日時:2019年10月6日 18時