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予想外の訪問者 ページ21

「……昴さん、私もう大丈夫です、から。あの……」

しばらく泣き続け、羞恥心が膨らんできた頃。私より一回り大きい体に包まれて慰められているなんていう状況に耐えきれるわけもなく、たどたどしく言葉を出した。

「……離して欲しい、ですか?」

「そうです。私もそこそこ酔いが覚めてきたので帰ります。」

すると、一度緩みかけた腕にまた力が込められた。早く離して欲しいんだけど。

「嫌です。これでも貴方の危なっかしさは充分理解しているつもりですし。」

「え?」

「貴方をこのまま閉じ込めておきたいという話ですよ。」

そう言って、流れるようにキスを落とす姿は一言でいえば手慣れている、というもので。私が慌てていると、それを楽しそうに見ている昴さんが口を開いた。

「私が貴方を想っている男の一人だということを忘れないでいただきたい。」

「……っ!な、何言ってるんですか!昴さんはからかっているだけ……」

その時、ドアの開く音と共に聴き慣れた黄色い声が聞こえた。



「やだー!お取り込み中にお邪魔しちゃったわね!」

「ゆ、有希子さん……!?」

昴さんが驚いたように声を上げ、腕の力が緩んだ。その隙に彼から逃れられたものの、目の前で一人嬉しそうにしている彼女を止められるわけもなく。

「や、待って!誤解です有希子さん!」

「うふふ、Aちゃんの結婚式にお呼ばれするのも近いのかしらー!!」

「ち、違いますからー!」

何も知らずに入ってきたであろう有希子さんは、楽しそうにいそいそと去っていった。有希子さんのあの様子だと、私と昴さんが付き合ってるって思ってるんだろうな……。



「ど、どうしてくれるんですか!私、有希子さんに誤解されたじゃないですか!」

私がいくら怒っても彼には効かないとわかっていた。今も予想通り、余裕そうな笑顔を向けられるばかり。でも悪いの彼だし、少し怒るくらい許してほしい。

「まあ、そう怒らずに。私が責任持って誤解を解きますから。」

「……信頼しても、いいんですか?」

「ええ。……それよりそろそろ休みましょう。もう夜も遅い。」


昴さんにほぼ力技で泊まるように説得され、仕方なく彼の言う通りにすることにした。とはいえ、私も、酔っていたこともあって帰る気力もなく、昴さんの好意に甘えてしまったのは事実だった。

夢のような→←行き場のなかった感情



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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (4月27日 22時) (レス) id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
天然石 - 続き書いて (2021年11月11日 19時) (レス) @page30 id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
焼きプリン - とても面白くて今日一気見しました!!!続きがとても気になります!楽しみにしてます。頑張ってください! (2021年3月25日 20時) (レス) id: ecb566eb91 (このIDを非表示/違反報告)
す だ(プロフ) - 頑張ってください!たのしみにしてます (2020年7月14日 2時) (レス) id: ebbf33f874 (このIDを非表示/違反報告)
月乃(プロフ) - 花束さん» ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります!頑張ります! (2020年4月24日 12時) (レス) id: 34cc67c93b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月乃 | 作成日時:2019年10月6日 18時

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