【志麻】あーる20のお約束/星結 ページ3
*side Shima
「ほんまありがとう、センラくん」
「いやぁ、Aちゃんがこんな酔うなんて初めてやわ」
「せやな。酒強いし」
「ここまで大変やったんですよ、いろいろと」
「え?何、大丈夫?」
「まぁ、Aちゃんも人並みに女の子なんやなーって感じでしたね」
「…?」
何もかも分かっているかのようなセンラくんの薄っすらとした笑みは、不思議とAに似ていた。
余裕かましたような、大人っぽいやつ。
「…ん、…え、あ、志麻くん」
「Aちゃん起きたし、僕はここら辺で」
「センラくんありがとな。またよろしく」
「はいはい。…志麻くんも、Aちゃんと仲良うね」
センラくんは足早に去っていってしまったが、そういう空気を読む感じだからこそ、お互い気を使わず居られる。
やっぱりセンラ、大人やなぁ。
なんて年上が思ってていいのだろうか。
「私、寝てた?」
「うん。飲み会?」
「あー、うん。いきなり」
「センラくんが送ってきてくれたんやで。A背負って」
「え⁈…お礼言っとかないと…」
メッセージを送ろうとしたのか携帯を探し出すA。
見つからなかったのか諦めて、既に沸いている風呂に入ることにしたようだ。
予定していた実況は中止にして、リスのみんなごめん、と心中で謝りつつパソコンを閉じた。
その時、どこからともなく聴こえるバイブレーション音に気がついた。
Aの着ていた、椅子にかけられたスーツのポケットからだった。
取り出して見ると、メッセージ着信だった。
[Aちゃん話せました?]
[志麻くん鈍いからねぇ、それとなーく言うんじゃ気づかんわ]
文面的にセンラくんだと分かった。
鈍い、話す、それなとなくじゃダメ。
…大事な話。
俺には言えなくて、センラくんに言える話。
考えたくないのに、頭の中には「別れ話」の3文字が踊って踊って離れない。
風呂場から聴こえる無機質なシャワーの音だけが、いつも通りに思えるくらい視界が眩んだ。
…確かに俺でも、こんな奴とは付き合ってたくないと思う。
働かない癖に自由に出かけることもあまり出来ないし、教養がある訳でも、上背がある訳でも、抜群の運動神経がある訳でもない。
そんな俺に愛想を尽かすのは、よく考えれば至極当然の通りだ。
全然Aが求めるものを与えてあげられない。
余裕なんかこれっぽっちもない。
センラくんは俺よりも年下なのに、それがある。
そんな劣等感が胸に広がって、鮮やかに糸を描き出した。
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キリカ@低浮上なうです(プロフ) - コラボ最高でした〜!いつも読ませて頂いている作者様揃いで、完璧に私得でした(笑)執筆お疲れ様です! (2018年9月20日 17時) (レス) id: 83003a603d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/seyu/
作成日時:2018年9月8日 19時