吹奏楽部と×××××＿lastword. ページ11
今朝、担任がこんな話をしていた。
誰もいない筈の音楽室から
ピアノの音が聞こえた。
あれ、担任だったのか...
俺は何故か、酷く冷静だった。
寝不足の頭で黒板を見つめていると、谷口に声をかけられる。
「...お前らだな？」
「あ、バレた？」
｢逆に、お前ら以外に何がいるんだよ。
ほどほどにしとけって言っただろ？」
谷口は心配性だ。
「わかったわかった...今後気をつけるって」
「...お前、今日もそいつの所に行くのか？」
谷崎が冷たい目で尋ねた。
「なんでそんなこと聞くんだよ...行くつもりだけど...」
「俺も行く」
「はァ！？」
唐突すぎるだろ。
せめて渡瀬に確認とってからにしろ、と言っても
聞く様子がないので渋々了承した。
渡瀬が気を悪くしないといいけれど。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
夜。
今夜は満月だった。
俺...否、俺たちは第1音楽室のある3階の下
2階にいるのだが、上からはピアノの音が流れる川のように旋律を奏でていた。
ﾀﾝﾀﾝﾀﾝﾀﾝ...
階段を上がる音。
「渡瀬...」
俺は少しゆっくり、扉を開いた。
「やあ、こんばんは...おや、お友達かい？」
「すまん、どうしても渡瀬のピアノが聞きたいらしくて...」
谷口も音楽室に足を踏み入れる。
「谷口颯だ。」
「そうなのかい？...嬉しいよ、谷口くん」
「早速本題に入るが...
アンタ、何者だ？」
「谷口...！説明しただろ？こいつは...」
反論しようとしたが俺の言葉は遮られる。
「この学年に...渡瀬奏という生徒は存在しない。」
...
「はァ！？」
振り返って渡瀬の顔を確認する。
そいつは妖しいほど綺麗な微笑みを顔に貼り付けていた。
「昨日、学年主任に確認した...名簿まで見せてもらった。
だが、そんな生徒の名前は記録されていない。」
「へぇ...よぉく調べたね。」
「わ、渡瀬...本当なのか？」
「嗚呼、本当だよ新崎くん。騙して悪かったね」
表情ひとつ崩さず答える。
「もう一度聞く...お前は一体
何者だ？」
渡瀬は窓の外の葉桜を眺めるようにして話し始めた。
「君達は、この学校の七不思議を知っているかい？」
「僕もその1部...第1音楽室の幽霊ピアノだよ」
「まさか、お前...」
「そう、僕は」
「幽霊だよ。」
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作者名：白しらす | 作成日時：2019年5月13日 2時
