ep.11 ページ13
「あんれ、佐智雄?」
仁川におんぶされた有剣が見つめる先には、確かに俺たちの頭…上田佐智雄がいた。
「帰国早々忙しいな」
「佐智雄〜!戻ってきたんか!」
「もうこっちいれんの〜?」
「ああ。今日からまた世話になる」
にしても、相変わらず綺麗な顔してんなぁ。喧嘩した後なのになんか爽やかだし。…てか俺の周りイケメン多くない?
『そうか。佐智雄がいたから、この辺早く片付いたんだ』
「どうしたA。ボロボロだな」
『もう聞き飽きたよ…。色々あったの!』
そう、色々と。この姿を見て笑われたけど、それも佐智雄らしくて自然と口角が上がる。初めて会った時もそうだった。わかりやすく頬に貼った絆創膏を見て、"ボロボロだな"って笑った佐智雄の顔を今でもよく覚えてる。普段はクールなあの佐智雄が、笑うと全部下に下がってとんでもなく可愛いなんてギャップはずるい。
「んね、Aも色々あったの。後で俺がちゃーんと叱っとくから佐智雄は気にしないで」
「小田島。あんまり過保護すぎるのも嫌われるぞ」
「……なに?佐智雄、唯ちゃんには過保護じゃなかったっけ?」
「それとこれとは、!」
「一緒じゃーん」
『おい有剣、あんま煽んなって…』
ねえ有剣?流石に佐智雄がちょっと頭抱え始めたから!唯ちゃんのことに関しては触れちゃダメだって…ああほら、ついに沢村にまで被害来ちゃったじゃん!沢村と唯ちゃんめちゃめちゃ上手く行ってるんだから、邪魔しちゃダメだって…。笑ってないでさぁ、もう。
「ん?あれ!?サッチー!?」
「おう。てかその呼び方やめろ」
「サッチーだ!!帰ってきたんだな!」
そうこうしてる間に今度は鬼邪高の連中が門まで辿り着いたらしく、佐智雄を見つけた楓士雄がいつものテンションで話しかけた。相変わらずよく分かんないあだ名で呼ぶ楓士雄に気を取られ、佐智雄の視線は鬼邪高へと移っていく。
『…楓士雄が来てくれて助かったね、沢村』
「ほんとだわ。まじで小田島覚えとけよ」
「ほー?佐智雄の大事な大事な妹ちゃんを奪っちゃったんだから、しょーがないでしょ」
『自分は邪魔されたら怒るくせにね〜』
「当たり前じゃーん。それは許せねぇわ」
『我儘だなあ、まじで』
「こんな俺もかわいーでしょ?」
あー、もう始まった。最初有剣に会った時は、こんな人だって想像できなかったけどな。どっちかっていうとカッコいい方だと思うけど、なんて言えば最後だから言ってあげない。今はね。
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作者名:飽き性 | 作成日時:2022年9月30日 1時