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「まず世界が遠い人には、私が人間からかけ離れたような見た目に見えます」
「へぇー!」
「そしてまあまあ近い人には、私が何かを伝えたいんだってことが伝わります」
「あー、なんかホラー話でよく聞くやつ」
「そうです、それです!最後に、壁が本当に薄い人は、はっきりと会話ができます」
「じゃあ俺は壁が薄いんや」
「そうですね、こんなに話したの初めてですよ!」
「なぁ、もし俺がもうここに来なくなったら、次に会話できる人と出会うのってどんくらい後になるん?」
「うーん、そもそも私、こんなにはっきりと会話したのは20年ここに居て初めてなので…」
「20年!?20年とか赤ん坊も成人してまうで!?」
「あははっ、そうですね!もう毎日退屈で退屈で。」
「そりゃそうやろな…」
20年も独りでここにいたのか。
「でも」
彼女は続けた。
「ここの岬の満ち引きを見てるのも、中々楽しいですよ!
ちょっと奥を覗けば、夏は海水浴してるし、山を眺めれば登山する人や子供達がいるし。眺めているといろいろ発見があるんですよ!」
「せやけどなぁ」
「ただ、その発見を誰にもお話出来ないんですけどね」
隣に座るAは、そう言って苦く笑った。
「俺で良ければ、話しにくるよ」
「え?」
「めったにおらへんのやろ?いくらでも話したるよ」
「…嬉しいです!すごくすごく!すごく嬉しい!」
そう言いながら、彼女は綿毛のように飛び跳ねていた。
なんだかこちらまで頬が緩む。
「あ、俺の名前は…」
「だめ!」
「え?」
「この関係には…ルールがあるんです…」
Aは目を伏せながら、そう答えた。
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作者名:ツナマヨ | 作成日時:2019年1月17日 23時