Flowerwall (ページ36)

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#35 ページ36

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Side Yuki.

「風呂ほんとなっがい」

なんて顔をするんだろう彼女は。

石「あの入浴剤いい匂いだった。どこの？」

「貰い物だから分かんない。じゃ、私も入る」

交代でバスルームに向かおうとして、俺の前に立ち止まる。どうした？と聞くと、肩や胸のあたりを触ってくる。影を作る程の、長い睫毛を伏せた表情に心音が速まった。

石「え、な、なに」

「少しがたい良くなったね」

石「...まあ、それも課題だからね」

一番指摘されているのが筋力の少なさ。身長の分、フィジカルでカバーしないといけないのに、筋肉が付きにくいという困った体質だ。
筋力トレーニングに費やす時間を増やしても足りないと言われてるけど。
でも、彼女に言ってもらえたら、少しは成果が出てきているということだろうか。

石「Aさんも鍛えた？」

「うん。私もフィジカルトレーニング足りないって」

細すぎると思っていた。
それが、こっちに来て芯のあるブレない体になっていると。試合を見てそう気づいた。

「課題が尽きないねー、逸材くん」

そう笑いながらバスルームへと消えた彼女。

石「......そう、簡単に男の体に触るなよなぁ」

ストレッチをしながら用意してくれたDVDを流す。
彼女はこの主演の俳優のファンらしい。

しばらくして彼女が出てくる。

「......意外と見てるね」

石「思ったよりアクションが...すごいね、体幹」

「この人、これがきっかけで鍛えてるからね」

石「Aさん、こういう顔好きなんだね」

「まぁ」

へぇー、そう。まぁ、いいけど。
リビングに俺の布団を用意してくれている彼女の後ろ姿見ながら、心の中で言う。
少し濡れた髪、火照って赤い顔、タイトなシャツから分かる細い腰のライン、グッとこないわけがない。
これは、見たら負けだ、見ない見ない。
テレビに視線を戻して視界に入れないようにする。

布団を敷き終わった彼女はキッチンへと行き、シェイカーを振りながらソファーに戻ってきた。
プロテインとか飲むのか。

石「それどこの？美味しい？ちょっとちょうだい」

「あ、だめ。ちゃんと管理されてるでしょ」

結局一口もくれず、そのままソファーで映画を見続けた。二人がけのソファーも、平均身長を大いに超える男女が座れば少し窮屈だ。

普通の男女だったら、このまま抱き締めてもいいんだろうなと思った。

でも、きっと彼女はそれを望まない。

膝先だけが触れた距離のまま、隣にいる彼女の存在を感じれることが心地よく幸せだった。

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