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ゆらゆらと揺れるミスラの肩の上はなんだかんだで居心地がいい。

気づけば、腕が千切れていたり、お腹から綿が出たりしている時はあるけれど。人間だったら死んでたな、と思うくらいスリリングな体験はしているけれど。

それでも、今のAからしたら、彼の肩の上は何よりも心地よく、そして馴染み深い場所になっていた。

「うお!?」

ミスラの動きに合わせて身体を揺らしていると、Aの体は突然ふわりと浮いた。変な声を上げながらも、耳あたりを誰かに摘まれているのを感じた。

この情の欠けらも無い手付きを、Aは知っている。

「まだいたんだ、君」

「げえ、オーエン」

「何その反応」

Aの身体を摘みあげる犯人。
それは、オーエンであった。
彼は、ミスラと同じ北の魔法使いだ。

金と赤のコントラストが美しい瞳は怪しい光を帯びている。
真っ白い服装とは裏腹にその身の奥底にやどる狂気はどす黒い。
整った美しい顔立ちに騙されて、その柔い心を蝕まれた人達がどれだけいたことだろうか。

正直に言おう。Aはオーエンが苦手だ。

「いつこのやわっこい塊が原型も留められないくらいにぐしゃぐしゃに散りばめられるのか、楽しみにしてるんだよ」

「こわっ!っていうか、それっていつぞやのオーエンじゃん!ミスラに喧嘩売ってさ、」

「うるさい口はこれかな」

「ぎゃーーー!!」

飛び出ていた目をぶちりと取られた。か細い糸は呆気なくプツリと切れる。
オーエンはそれを見て楽しげに顔を歪めていた。本当に趣味が悪い。

しかも彼は千切ったAの目をぽいっと無造作に捨てた。
なんて酷い男なのか。信じられない。
Aがじっと彼を睨みつけていると、その視線に込められた意味に気づいたのか、オーエンは楽しげに口に弧を描いた。

「口じゃなくて目ですよ、これ」

捨てられた目をぼんやりと見つめるミスラが言う。
確かにそうだが、今言うことだろうか。
北の魔法使いはやはりマイペースだ。

「ふふ、間違えちゃった。次は大丈夫。外さないから」

「ヒエッ!ミスラァァァァ!!」

伸びてくる手に怯えて、Aは叫び声をあげる。
すると、ミスラはため息をついた。

「治すの俺なんで、余計な仕事増やさないでくれます?」

そう言って、ミスラはAの首根っこあたりを掴み、引っ張りあげた。

助けてくれることは有難いが、ブチブチと嫌な音が首元から聞こえた。
絶対に破けた。布が裂けた。そんな確信を抱いた。

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あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます!素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね!とっても面白かったです!続き待ってます!o(*゚∀゚*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星子 | 作成日時:2020年2月29日 2時

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