そばにいて。 ページ19
それからまた意識はなくなって夢の中にいた。夢っていっても自分寝ている感覚しかなくて特別な内容の夢は見ていない。
まぁ、高熱出してるからそんなこともあるでしょ。
おでこに冷たい感触があって気持ちいいけど若干驚いてゆっくり目を開ける。
目の前には冷えピタを僕に貼ってくれたAさんがいて僕が目を覚ましたことに気づいて心配していたであろう顔が少し明るくなっている。
「河村さん、大丈夫ですか？熱高くて倒れちゃったんですよ？」
冷えピタを貼ってくれた手に触れて僕の頬に触れさせる。ほんの少しだけど冷たくて気持ち良くて、どんな解熱剤よりも効果あるんじゃないかと思う。
「福良くん呼んできますね、河村さん目覚めたって知らせなくちゃ」
「福良のとこに行かないで」
僕の手から離れた君をもう一度掴む。今度はそれなりに力を入れる。
「福良のとこ行かないで。そばにいて」
立ち上がろうとしていたAさんは元の位置に戻り僕の手を握ってくれた。
「分かりました。どこにも行かないのでゆっくり休んでくださいね」
安心した僕はまた夢の中に戻っていった。
＊＊＊
fkr
仕事も一区切りつき河村の様子を見に行くと伊沢が先に居て俺を見ては何やらにやけている。
ドアを少し開けて二人の様子を見ていたらしい。ホント趣味悪いよな伊沢は。
「恋愛ドラマ見てるみてぇでなんか照れちゃう」
寝ている河村の手を握っている親友の後ろ姿はいつも知ってる親友じゃなくて。
河村も寝てはいるがとても幸せそう。
お前、熱あるからな、早く良くなってくれよ。
少しテンションが上がっている伊沢を無視して静かに二人のいる部屋に入る。
物音に気づいたのか繋がっていた手はすぐ離された。
別にそのままで構わないのに。
「河村、どう？」
「さっき目覚めたけどまた寝ちゃったみたい。かなりしんどそう」
「俺、河村が良くなるまでここにいるよ。看病はAに任せるけど」
「なんだそれ」
二人っきりにしてあげたいけど親友を一人任せるわけにはいかないからさ、許してよね。
お前が元気になったら好きなだけ二人っきりにしてあげるから。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年1月3日 20時
