【原神】神の目を失っただけのはずだった

箸の使い方 ページ32

「Aさん、こちらが注文の品でよろしいでしょうか」

「はい、ありがとうございます」

　店員さんが私が注文した料理を持ってきた。めちゃめちゃ早い。ちょっと驚いた。

　それに、私の名前を知っていた。私は彼女に見覚えは無いけど。やっぱり私は有名人なのだろう。

　昔はてっきり医学の世界の中においてのみの有名人だと思っていたが、かなり知名度が高いようだった。

　とりあえず、私はご飯を食べ始めた。やっぱり璃月の料理もおいしい。モンドとはまた違った美味しさだ。

　私がご飯を食べていると、タルタリヤは私の手元をジッと見ている。もしや、まだ箸の使い方をマスターしていないのか。

　この前三人で食事したときは鍾離先生に箸の使い方を教わっていた。確かに箸は難しい。私も鍾離先生に教えてもらった。

　モンドでは普通にスプーンやフォーク、ナイフで暮らしていたから璃月に着いたときには驚いた。

「タルタリヤ、私じゃ鍾離先生みたいに上手に教えられないかもしれないけど、箸の使い方、教えようか?」

　鍾離先生の目の前で言うのはちょっと良くなかったかもしれない。でも、なんとなくタルタリヤが教えて欲しそうにしてたから仕方ないよね。

　それに、学ぶ内容が同じでも誰から学ぶかによって理解できるかどうかって変わるからね。

　鍾離先生って説明がちょっと難しいし、結構豆知識を交えて寄り道をめちゃくちゃするからなぁ。

　でも、決して私が教えるのが上手いって訳じゃない。弟子はたくさん居たけど、授業みたいのはほぼしなかった。

　私が行っている作業を見て、質問があればするみたいな。あとは兄弟子、姉弟子に聞いてもらっていた。

　タルタリヤの方を見ると、

「ありがとう、A」

と言ってくれたので、教えることにした。私なりの方法でだけど。

「じゃあ見ててね。こうして…こうして…こうして…こう!」

　するとタルタリヤが笑う。確かに変な教え方だけど笑うほどじゃないんじゃないの?

「く…ふふっ、でも、何となくは分かったよ。ありがとう」

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