【歌い手】捨てられない想い２(そらる)

七十八曲 ページ33

そらる「そっか、新しい家に引っ越ししたんだよね。
まぁ、普通の家に防音設備ある方が少ないもんね」



『まぁ、別に必要ないですし、日常生活の音は遮断するので良いかなと思って』



そういうと、少し暗い顔をしたそらるさん
間違ったかもしれない、と思ったものの、それ以上そらるさんはなにも言わなくなったので私もまた口を閉じた



そして少しして、車は駐車場に止め、二人の足は大きなビルに入りエレベーターで沢山の階を登る


登り終わり、ある部屋に入るとすぐ荷物を置いて、手慣れたように用意を始めた


私はなにをして良いか分からずソファに座りそらるさんの行動を見る


すると用意が終わったのか少ししてそらるさんは私の方を向いて



そらる「この曲なんだけど」



私に楽譜を見せた



それは


『この曲って、…そらるさん一回歌ってるじゃないですか』



そらるさんが一度歌っていた、沢山の高評価が付いている曲



その曲を



『どうして私なんかに』




歌い手をやめた私に教えてほしいのだろうかと疑問に思っていると



そらる「-暁-の歌い方を教えてほしい。
この歌は-暁-の歌い方が一番かっこ良いから。
…この曲を俺のものにしたいんだ。

コンサートまで時間がなくて、慌てさせてることは重々承知してるけど、このままでコンサートに望みたくない。」



私の目をまっすぐ見るそらるさん
その目は決意の意を表していて


その決意は私には消えて無くなった感情
その感情をそらるさんは私に教えてほしいという
…でも、そんな目を向けられたら




『………私に教えられることなら…。』



明日は平日
きっとそんなこと忘れているように、そらるさんは私の返答を見て、微笑んだ。

七十九曲→←七十七曲 *2/18↓

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す