【完結】約束4(ワタナベマホト)

恋人編４ ページ24

逃がさない

マホトの瞳は私にそう告げていて
私だってとっくに観念している
隠そうとすればする程にダメになってってるってわかるから

だから、だけど

マホトは私に好きだと言っていない
あの病室で打ち明けた想い、そして覚えていた約束はそれを物語っているけれど
それでもこだわりたいと思ってしまうのは驕りだろうか
言葉にして伝えてほしい。そんな乙女心、でしょう？

嘘じゃないの
でも、マホトはそれを聞いても更に追及してくる
私の迷いを見透かしていて
わかってる、観念するべきだ

意を決する


「〜〜っ…」


だからといって恥ずかしい気持ちが消える訳でもなく
私は瞳いっぱいに涙がたまっていくのを感じて
どうしようもなくて、たまらない

私の頬を持っているマホトの手をはらって
その胸に思い切り顔を押し付けながら抱き着いた


「A？」

「言う、ちゃ、ちゃんと言うからっ」


突然抱き着いた私をマホトは困惑しながらも受け入れてくれる
優しく背中に回された腕に恥ずかしさは募っていく一方で
顔が熱い
マホトの香りに包み込まれながら、早鐘の様になる心臓を深呼吸で落ち着かせようとしながら

私は、


「あ…あれ、も…ぜんぜん、してない…から」

「……あれ？」

「っ、なんで」


わかってよぉ

これが本当に限界
恥ずかしさで死んでしまいそうで
一生懸命絞り出した言葉はマホトには伝わらないみたいで
彼は困惑した声色でそれを繰り返していた

べそ、なんて効果音がつきそうな程、典型的な泣き方で懇願した私の言葉にマホトはもう一度よく考える仕草を見せる

あぁ、もう

どうにでもなれ


「え…え、っち…してないでしょ…！」

「！」


嚙みながら、だけど恥ずかしいのを誤魔化すように少し怒りながら
もう言った
言い切った

そう、付き合ってからマホトは一度もそういう事をしようとしない
最初は仕方ないと思う
私は怪我していたし、入院していたし
だけど退院して暫くたっていてもう今はピンピンしている
それは誰が見てもわかる事で

なのにマホトはキス以上の事はしない

その事実はどんどん私をネガティブにさせていく
でもそんな事聞けない
まして言える訳もない

そして不安だった


「言葉も、それも、ないから…だから」


どうして？なんてそんな考えは当然巡る
付き合う前はあんなに強引で、結構な回数していたように思うのに

そんな私の本音を打ち明けて
恥ずかしすぎてもうマホトの顔なんて見れそうにない
熱すぎる顔を彼の胸に押し付けてると


「…不安だった？」

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