データ13 ページ14
翌日も、彼女は中也と共に出勤した。
森鴎外からは逃さないと。
太宰治からは必ず連れ出すと。
尾崎紅葉からは側にいて欲しいと。
短期間で実に多くの人の重い言葉をもらい、内心混乱していた。
中「おいおい、手前・・・大丈夫か?」
横で話しかけられて我に返る。
考え事をしているため、最近の眠りは浅く、ぼーっとしていることも多い。
『大丈夫ですよ。それより、中原さんも・・・ちゃんと寝てくださいね』
寝ていないのは中也も同じ。
昨晩もそう・・・時間さえあれば、中也はメルロを探している。
色々な人の思いを聞いたけれど、自分のこの意志だけは曲げられない。
・・・私は、中也さんをひとりにしない。
と、Aは思うのだった。
昨日のように、中也は彼女を部屋まで送る。
仕事は昨日終わらせた。追加もない。
一人きりの部屋で、昔のことを思いだしていた。
始めて来たのは4年前。
情報屋として有名なAには、欠点があった。
武力が全くないのだ。
情報は、時にひとつの組織を丸ごと潰してしまうほどの力を持つ。
逆恨みをされても仕方のない職業である。
しかし女ひとりに力はなく・・・Aには武術もない。
相手より早く先に情報を手に入れて、居場所がバレたなら襲われる前に逃げる。
そんな折、Aはポートマフィア首領、森鴎外に取引を持ちかけられた。
ーーーマフィアの情報に触れなければ、君の窮地を必ず幹部が救おうーーー
マフィアに手を出さない代わりに、Aの身の安全は保証するというものだ。
もともとマフィアはAにとっての常連であり、仕事で何度か危険な目に遭っていたAにとって悪い条件ではなかった。
そして、マフィアで仕事する際に使えるようにと、部屋をあてがわれた。
その部屋この部屋だ。
この無機質な部屋が、かつての拠点のひとつ。
そして・・・中也と出会った場所だった。
『本当に変わりませんね・・・中也さんは』
今は中原さんと呼ぶものの、昔は中也さんと読んでいた。
太宰さんの逃亡を助けてから、後ろめたくて苗字で呼んでいる。
今も昔も、あの真っ直ぐな性格は変わらない。
身内に優しくて、真っ直ぐで、不器用で、強がり。
強いようで少し脆い彼に・・・
『好きなんです・・・昔から』
こんな言葉は言えるわけもない。
293人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
青鯖。(プロフ) - 出雲さん» 全然大丈夫ですよ!有難うございます! (2018年1月10日 19時) (レス) id: 87d9268c5a (このIDを非表示/違反報告)
出雲(プロフ) - 青鯖。さん» お返事遅くなってしまいすいません!ぜひ青鯖。さんの小説に載せさせていただきたいです! (2018年1月10日 18時) (レス) id: ac01b1ef17 (このIDを非表示/違反報告)
青鯖。(プロフ) - 出雲さん» はい!勿論です!!私、イラスト集を営んでいるのですが、そちらに載せる許可を貰いたいのですが…。 (2018年1月9日 20時) (レス) id: 87d9268c5a (このIDを非表示/違反報告)
出雲(プロフ) - 青鯖。さん» イラストありがとうございます!!こちら小説に載せさせていただいても良いですか??? (2018年1月9日 20時) (レス) id: ac01b1ef17 (このIDを非表示/違反報告)
青鯖。(プロフ) - 藍波さんhttp://uranai.nosv.org/img/user/data/9/c/7/9c72c58a63b60c2ba67c24aa0627d1fa.05.jpg 電脳少女メルロhttp://uranai.nosv.org/img/user/data/e/4/d/e4de4ba906237036327236814a8558b3.06.jpg出来ましたー!画質とかあんま良くないかも知れません…! (2018年1月9日 19時) (レス) id: 87d9268c5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:出雲 | 作成日時:2017年11月3日 18時