転生した 苺の王子は 鬼殺隊 7

弐佰 玖拾 伍 話 ページ15

莉犬side





俺たちは基本的に、夜に移動する

日が昇っている間は、禰豆子のと同じような箱に俺が入る
それを縁壱が背負って移動する

そして、旅の途中で出会った鬼を倒すのだ







縁壱「…頭」

莉犬「頭？」

縁壱「苦しくないか？耳があるのに笠をかぶらせてすまないな」

莉犬「ああ、これのことか」






俺は犬耳としっぽを隠すことができない

だから犬耳は、かぶり物である笠で隠して
しっぽは、羽織の中に隠してあるのだ






莉犬「平気だよ。ちょっとむず痒いけど…これは俺のためでもあるから」

縁壱「そうか…」






いくら人が少ない夜でも、もし見られたら終わりだ
犬耳がついてるなんて怪物以外の何物でもない






莉犬「今日は快晴だね。星がよく見える」

縁壱「そうだな」


縁壱「…」

莉犬「…」






俺と縁壱は、よく無言になる
お互いに気を使っているからかもしれない

もう…あの頃みたいには話せないのかな…






莉犬「ねぇ…縁壱」

縁壱「なんだ？」

莉犬「どうして…鬼狩りになんかなったの…？」

縁壱「！」






ずっと聞きたかったこと…


原作の縁壱は、鬼に"うた"を殺されて鬼狩りになる
でも、その鬼は俺が倒したはずだ

なら、今の縁壱はなぜ鬼狩りになったのか…？
うた をほったらかして…？






縁壱「うたが……鬼に殺された……」

莉犬「！！…」






嫌な予感はしていたんだ、ずっと…
原作どうりに、縁壱が登場した時からずっと…






縁壱「子供が産まれたんだ…男の子だった。莉犬と名付けたよ」

莉犬「っ…」

縁壱「その子が2歳になる夜。俺が誕生祝いを買いに出かけた夜。うたと子供は…殺されていた」






ああ…どうして…
どうして俺は…






縁壱「私は10日程、ぼんやりして妻と子供の亡骸を抱いていた。鬼を追ってきた剣士に、弔ってやらねば可哀想だと言われるまで」






どうして俺は…大切な人を傷つけてばかり…
結局、何もできなかった…







縁壱「私の夢は、家族と静かに暮らすことだった。小さな家がいい。布団を並べて眠りたい。
愛する人の、顔が見える距離。手を伸ばせば、すぐに繋げる…届く距離…
それだけで良かったのに…」






縁壱が、こんな思いをしないように…
転生した意味を捨ててでも、この世界で出来た家族のために何かがしたかった

うたを守れたというだけで、俺は満たされた
なのに…

これじゃ、俺が転生した意味が…ない…

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