トラウマ。 ページ48
…仕方ないな。今のうちに打ち明けよう。
俺が中学校に上がる前、両親が二人ともこの世からいなくなった。
仕事に空きができないようにしてもらってたのも、心の傷を埋めるため。それも、一つあった。
何かきっかけがあったり、一人になったりすると、ふと思い出すことがある。
その度に…俺は俺でいられなくなる。
年末年始を乗り越えて、2月。現在。
俺はありがたいことに、また別の映画の宣伝で番組に呼ばれた。
現役青山学院大学生としての名を背負って、クイズ番組に出演。
映画の出演者の代表として一人で番組に出させてもらった。
「では第5問!」
チーム戦で順調に答え進め、俺がこれで答えられればボーナスステージに進める。
よし、俺が決めてやるぞ。
俺は集中して問題が出るモニターを注視した。
「映像を見てお答えください」
画面が切り替わる。
パッパー
……これ。汽笛。
モニターの中で電車がホームを走り抜いていく。
電車だ。
待って、
画面が、
見たくないのに目が、
離せなくて、
ねえ俺今、
息できてる?
目の前が真っ黒になって、膝がガクガクして、立ってられなくて。
俺は膝から崩れ落ちた。
「…疲労ですかね?やっぱり仕事を減らしてあげた方が、」
「いえ、そうすると余計にストレスが増えるみたいで。…どうすればいいのか」
そっと目を開けると、俺の右側で二人が話してた。
「亘さん。起きたみたいですよ」
「あ、墨田くん。わかりますか?」
俺が小さくうなずくと、安心したように笑った。
「中島くん、ナースコール押して貰ってもいいですか?」
「わかりました」
会話は聞こえてるけど、耳の穴が塞がってるように聞こえる。
その代わりに、汽笛の音がず―――っと頭の中で響いてる。
俺の呼吸がまた、乱れる。
「大丈夫、大丈夫」
何故か病室にいる中島くんが、俺の身体をさすってくれる。
でも、
「すみません…一人に、してもらっても、いいですか…?」
二人には申し訳ないけど我慢できない。
「ですが…」
「…一人に、して…」
そう伝えると、行きましょう、と中島くんが亘さんの手を連れて病室を出て行った。
それと入れ違いに看護師さんが入る。
そして今、俺の頭の中で、何度も何度も同じシーンが繰り返される。
駅のホームに鳴り響く電車の汽笛の音。
急ブレーキに混じる、ドンッという鈍い音。
染まる赤色。人々の悲鳴、怒号。
救急車とパトカーのサイレン。
お経の音。ママの泣く声。
「うう、う…」
俺は一体いつまで苦しまなねばならないのか。
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作者名:スバル。 | 作成日時:2022年5月26日 0時


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