土。 ページ40
顔近いし、っていうか寄りかかられてるし。
和也が近すぎて、まったく集中できない。
「ちょ、和也。ごめん…」
「ん?ああ、悪い悪い。苦手なん気づかんかったわ」
和也は謝りながら身を起こす。
「いや、こっちこそごめん」
俺は台本をパタンと閉じた。もう集中できない。
「え。もうええの?」
「うん。一緒にストレッチしよか」
朝起きて、一回すでにしてしまってるけど。
見守られてるのが歯がゆいというか、なんというか…。
「凪は、毎日ストレッチしてるの?」
「うん、まあ」
和也は、開脚をしながら訊いてくる。
「凪って、意外と固いんやなぁ」
俺は自分の足を見る。見事な90度。固い。
「悪かったな」
そう答えると、和也は慌てて言った。
「ごめんって!そんな機嫌損ねんといてや。ただ、凪にも苦手なことはあるんやなあって思っただけやから」
俺は和也を軽くにらんだ。
「和也は柔らかすぎるんや、同じにせんといて。軟体動物かって」
和也は大声を上げて笑った。
なに、おもろくはないんやけど。
「大橋ぃ…。うるさい」
「あ、ごめん丈くん」
丈も起きてきて、そのあと朝食を食べに部屋を出た。
実を言うと、和也の一言が結構深く胸に刺さってて、その日から体の柔軟を意識するようになった。
負けず嫌いもほどほどに。でも、完璧なアイドルでいたいから。
2月。
「おかしくなりそう…」
「なにが?」
俺は家の床に直で寝転がる。
「暇すぎて、なにすればええか分からんの」
「何その贅沢な悩み。普段より仕事少ないだけで、それなりに仕事あるやんか」
「違う。大学春休みやから、時間有り余ってんの」
「じゃあレッスンは?」
「俺の給料じゃこれが限界。最大までいれてもらったんやけど」
沈黙が流れる。
「やから、俺と一緒に買い物行こうって」
「それは嫌」
「なんでぇ〜!」
誠也は床に座り込んだ。
かれこれ数か月誘われ続けてるけど、毎回断ってる。よく諦めへんよな。
「ええやん、一回くらい」
「嫌なんやもん、外」
「なんで?」
「なんでって…」
しまった。前は誠也が高いの勧めてきそうやからって理由にしたけど。
俺が外に出かけられない本当の理由は言えない。
…なんか適当な理由付けないと。
「寒いやん」
「寒くないって、店の中は。暖かいの着ていけばええやん」
「そうやけど…」
再び沈黙がやって来た。
ごめん誠也。こればかりは誰にも言えない。
「やったら、勝手に買ってきてやる」
誠也はムスッとした顔で言う。
なんか申し訳ないし。
「ならお願い」
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作者名:スバル。 | 作成日時:2022年5月26日 0時


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