検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:5,101 hit

拾頁目 ページ19

.

 あまりにも適当にポケットに突っ込むものだから、地図はもうグシャグシャだった。「スマホにすれば?」という声が何処からか飛んできたが、ガラケーはパタパタ開けたり閉めたりするのが楽しいので変えたくはない。ぶっちゃけオンボロで色んな機能が使えないのだが。
 霧子は玄矩の地図を覗き込む。

「これは…地の標に赤き結界が」
「うん。赤き結界の中の迷宮を放浪してやっと分かってきた。怪異の行動範囲は広くはない」

 地図には赤い円の印が大量に付けてあった。被害現場を目撃はしたが、逃げ足が早くちゃんと位置情報を掴めずにいた。しかし人間も怪異も必ず行動パターンというものが存在する。そこから、次現れる場所を特定した。

 上手く行けば今夜中に終わる。運が良ければ冥の母親も生きている。
 玄矩はその事を伝えに、冥の元まで会いに行った。

「絶対に助けるから、君は家で待って──」
「お兄ちゃん、私も行く」
「…は? 喋ったかと思ったら何言ってんの」

 冥は玄矩の服の裾を強く掴んだ。振り払おうとすれば容易に振り払えるが、この少女ならそのまま何処かへすっ飛んでもおかしくない。怪我をさせると怒られる。
 冥はぎゅっと目を瞑り、珍しく大きな声で言った。

「わ、私だけなんもしてない! 私もお母さんを助けに行きたい!」
「なんもしないのが仕事なんだろ、ハッキリ言って足手まといだし君が死んだら本末転倒だろ。俺は連れていかない。邪魔」
「迷惑かけないから、お願い!」
「俺は人守りながら戦うとか無理なの! 女子供なんてすぐ狙われるだろ。大人しくしろ」
「やだ!」
「やだ!?」

 玄矩の情に流されない機械的な理論に負けず劣らず、冥は思い切り思いをぶつけた。反抗期かのようにいう事を聞かない冥に玄矩は頭を掻いた。しかし譲るわけにいかないのもまた事実。玄矩は「気持ちは分かるけどダメ」と告げ、ご機嫌とりのグレープソーダを手渡した。

 足早に去っていく玄矩の背中を、冥はじっと見詰めた。


「さてさて…、一般人のお方には申し訳ないけど、道案内してよね〜」

 日が暮れた頃、玄矩は怪異が現れると思われる路地の近くで待ち伏せをしていた。すると、案の定そこに黒髪の女は現れた。真っ赤なコートが青白い肌に映える。しかし口は裂けていなかった。玄矩の中で疑問が生まれるが、気にする暇もなく怪異は自らの腕を傷付けると一般人の男性に飲ませた。

 すると男性はゆっくりと歩き出した。まるで操られているかのように。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←捌頁目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.0/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
設定タグ:夜を駆ける者共よ , イラスト集 , 小説 , オリジナル作品
関連タグ:文スト , ShipChild , 呪術廻戦 , stxxx , アニメ , d!
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

R!N(プロフ) - すんげぇ…かっこいいですね (2019年12月13日 0時) (レス) id: 5067a2983b (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、勿論です! 是非描かせて頂きたいです! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - わ〜ツツフォーマルな玄矩君めっちゃかっこいいです…!優先順位は低めで大丈夫なので、暇ができましたら攸のドレスコードを描いていただけないでしょうか…?よろしくお願いします! (2019年10月20日 23時) (レス) id: a16637a9e2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:くろせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月13日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。