□ 壱 路地裏の晦冥 □ ページ11
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「ねぇ、アンタ美味しい？」
街の明かりが入り込まない隘路。薄暗く狭い路地裏では、奇抜に鮮やかなオレンジ色の頭髪は一際目立った。切らずに伸ばしっぱなしにした前髪は目に掛かり、その隙間から微かに覗ける瞳は毒を含んだ紫で、獲物に飢えた獣の如くギラついていた。限界まで吊り上げた口角、そこから見えるのは剥き出しの歯。
玄矩が話し掛けた相手は人間ではなかった。一般の人間には見えず──希に、目視する人間がいる、人の内臓を食う化物。怪異だ。
後ろから見ると美しい黒髪が真っ直ぐ伸びた女性。玄矩の貼り付くような耳に残る声を聞き、怪異は一般人に向けて振り上げていた腕を止め、反対方向を向いた。
怪異の顔を見て玄矩は片眉を上げて嫌そうな顔をした。「げ、口裂け女かよ」
怪異の口は耳まで裂け、玄矩とは違う意味で歯を剥き出しに笑って見えた。
「アンタこそ、オイシイ…？」
「はい出た質問を質問で返す馬鹿〜。おめでとう馬鹿認定です！ …でもさー、俺頭悪いヤツ嫌いなんだよね〜。うーん」
途端に息つく間も無く煽り始めた玄矩。いや、別に彼に「煽ろう」なんて思考はなく、素で無意識に人を煽るのだが。
玄矩はニッコリ笑う。「じゃあ」
「死んで貰うしかないか！」
そう言った瞬間怪異は刃物のように尖った爪を突き付けて来た。「うおっ」なんて声を漏らしながらも余裕綽々にそれを仰け反り避けた。地面に手をつきブリッジ型になり、そのまま足を蹴りあげ怪異の腕を挟み込む。
「よい…しょっ！」
足で怪異を投げ、玄矩はすとんと正位地に戻る。丁度目の前に来た一般人に「逃げた方がいいよ」とついでに告げる。
立ち上がり振り返った玄矩の顔は無表情だった。
懲りず襲い掛かってくる怪異に、玄矩は溜め息を吐いた。玄矩は靴の踵を地面に強く打ち付けると、つまらなそうな顔で伸びてきた怪異の腕を蹴り落とした。ポケットに手を突っ込んだままで。一般人の「ひっ」という声が耳に入った。どうやら怪異が見えるようになってしまったようだ。バタリと地面に落ちた怪異の腕からは、真っ赤な液体がどくどくと流れ出る。
玄矩の靴の先には刃物が仕込まれていた。玄矩は「骨と筋肉の間に刃を入れれば楽に斬れるんだよ」と言った後、飛び出すと怪異の腹に蹴りを食らわした。
「お腹減った」
そう言って札を怪異の額に貼り付けた。するとみるみる内に怪異は崩れていき、最後には札に触れていない怪異の腕だけが残った。
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Ｒ!Ｎ(プロフ) - すんげぇ…かっこいいですね (2019年12月13日 0時) (
レス) id: 5067a2983b (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、勿論です！ 是非描かせて頂きたいです！ (2019年10月21日 0時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - わ〜ﾂﾂフォーマルな玄矩君めっちゃかっこいいです…！優先順位は低めで大丈夫なので、暇ができましたら攸のドレスコードを描いていただけないでしょうか…？よろしくお願いします！ (2019年10月20日 23時) (レス) id: a16637a9e2 (このIDを非表示/違反報告)
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