29 ページ31
.
.
.
Aside
としみつくんの電話から数時間、間もなく日付も変わろうかというところ。落ち着きなく前髪を触ったり、意味もなく部屋の掃除をしていると、スマホが震える。
「としみつくん、」
と「ごめん、遅くなった」
「大丈夫だよ、撮影お疲れ様。」
としみつくんの車に乗り込む。無言の車内は、少しだけ重たい空気が流れていた。
と「降りて」
「え？あ、うん」
いつの間にか目的地に到着していたようで、急いで車から降りる。夜景と言うには少しお粗末な、それでも岡崎の街が一望できる小さな公園。真新しいベンチに腰掛けると、としみつくんは私の手を遠慮がちに握った。
と「昨日は、ごめん」
「…としみつくんが謝ること、何もないよ。むしろ私こそごめんね？」
と「てつやに合コン誘われて、行かんって言ったんだけどアイツ強引だから結局連れてかれて。最初は全然乗り気じゃなかったけど、酒はいるとなんか楽しくなって。あの女に気があるとか、全然そんなんじゃない」
「、うん」
と「Aに見られた時、すげぇ後悔した。なんであんなことしたんだって思って、自分の気持ちに気づいたところだったのに」
「もう、いいってば。合コンでお酒飲んでたらそういう雰囲気になることだってあるだろうし」
それに、わたしにそれを嫌だって言う権利もないし。
小さな声でボソボソと喋る私の手を、としみつくんはぎゅっと握った。暖かくて、ゴツゴツとした男らしい大きな手。
と「そんなこと言わんで」
「でも、」
と「Aには、嫌だって思ったこと全部言ってもらいたい。」
「そんなん、めんどくさいやん。ただの女友達なのに」
と「A、」
私の名前を呼んだとしみつくんは、見たことがないくらい真っ直ぐな目をしていた。少しだけ怖くなって、目を逸らす。
と「Aのことが好きだから、嫌だって思うことはしたくない。」
.
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちーやん(プロフ) - 初コメ失礼します退院おめでとうございます!!無事退院出来て良かったです！更新お待ちしております！ (2019年9月5日 18時) (
レス) id: 7147efd68f (このIDを非表示/違反報告)
遊馬ゆら(プロフ) - みーこさん» ご心配いただきありがとうございます( ; _ ; )無事退院できましたので、ゆっくり更新頑張ります……！ (2019年9月5日 15時) (レス) id: dc4ba81152 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - 初コメ失礼します。作者様のお話とても楽しく読ませていただいてます！お体にお大事になさってください。 (2019年8月24日 23時) (レス) id: 9cd930825e (このIDを非表示/違反報告)
遊馬ゆら(プロフ) - なんかさん» ありがとうございます( ; _ ; )これからも頑張ります！ (2019年8月19日 23時) (レス) id: dc4ba81152 (このIDを非表示/違反報告)
なんか - とっても、面白かったです! 他にもまだまだ上げてください!お願いしています! (2019年8月19日 22時) (レス) id: f387bdc911 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遊馬ゆら | 作成日時：2019年7月27日 22時
