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としみつside
ビールを飲むAは、癖なのか首元にかかるネックレスをいじっていて、時折物悲しそうな顔をする。
と「美味しい?」
「ん?美味しいよ〜次はとしみつくんも飲めるように近くのお店にしよ?」
と「だなぁ」
「…何も聞かないね、としみつくんは。」
と「聞いたら、会ってくれんような気がして聞けん」
「…そっか」
こんなときてつやなら、りょうなら、どうするんだろうか。気の利いた言葉のひとつもでなくて頭を搔く。
だから童 貞だっていじられるんだよなぁ
「今は、まだ」
と「ん?」
「今はまだ、言えん。けど、いつか聞いてくれる?」
と「Aが話したいって思ってくれるんだったら、その時はちゃんと聞く。」
「…ありがとう」
安心したように笑ったAに照れくさくなって、視線を外しノンアルコールのビールを飲む。少しぬるくなったビールが喉をすぎる。
と「バカ、お前飲みすぎだって」
「いいじゃん別に〜!」
と「ダメです。ほら、水飲んで」
店に入って1時間半が経ち、Aはハイペースでお酒を飲んでいた。頬は赤く染まり、目もとろんとしている。水の入ったグラスを頬に当てた彼女は少し色っぽい
「ふふ、としみつくん」
と「ん?」
「見すぎ。穴空いちゃう(笑)」
と「そんな見とらんって!(笑)」
「見てたよ〜視線感じたもん!」
お酒が入って少し子供っぽくなったAは、何が面白いのかずっと笑っている。
気づけばそろそろ日付も変わりそうになっていたので、Aを支えながら店を出た。
「いくらだった〜?」
と「いいって、ほら、ちゃんと歩いてくれん?」
「ねぇ〜払わせてって!」
と「女に払わせるわけないやん」
「としくんかっこい〜(笑)」
と「うざ(笑)」
助手席に乗せて、車を発進する。窓の外を眺めるAは、先ほどと打って変わって静かだった。
「としくん」
と「も〜、なに?」
「ありがとね、楽しかったよ」
そう言って目を閉じたAは、しばらくして静かな寝息をたてていた。
彼女が抱える不安や悩みが何なのかはわからなくても、そばにいて笑わせてやるくらいは出来る。出会って数日の彼女は、いつの間にか自分にとって守りたい存在になっていた。
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ちーやん(プロフ) - 初コメ失礼します退院おめでとうございます!!無事退院出来て良かったです!更新お待ちしております! (2019年9月5日 18時) (レス) id: 7147efd68f (このIDを非表示/違反報告)
遊馬ゆら(プロフ) - みーこさん» ご心配いただきありがとうございます( ; _ ; )無事退院できましたので、ゆっくり更新頑張ります……! (2019年9月5日 15時) (レス) id: dc4ba81152 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - 初コメ失礼します。作者様のお話とても楽しく読ませていただいてます!お体にお大事になさってください。 (2019年8月24日 23時) (レス) id: 9cd930825e (このIDを非表示/違反報告)
遊馬ゆら(プロフ) - なんかさん» ありがとうございます( ; _ ; )これからも頑張ります! (2019年8月19日 23時) (レス) id: dc4ba81152 (このIDを非表示/違反報告)
なんか - とっても、面白かったです! 他にもまだまだ上げてください!お願いしています! (2019年8月19日 22時) (レス) id: f387bdc911 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊馬ゆら | 作成日時:2019年7月27日 22時