【すとぷり】その愛で私を抱きしめてみて (ページ12)

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私がまだ小学校低学年の時

どうしても行きたいお祭りがあった

そのお祭りは、本当に有名で

ちょっと家から遠くて

テレビで見て行きたい行きたい言ってたら、お父さんが連れてってくれることになった

車でお祭り会場に向かった

有名なだけあって本当に楽しかった

お母さんとお父さんと仲良く3人で手を繋いで歩いていた

そんな時、近くで女性の叫び声が聞こえた

喜びの悲鳴とかじゃなくて

苦しみに悶えるような

その近くからどよめきとまた新しい叫び声と

次第にその声は近くなってきて

背の高いお父さんは何かが見えたのか私とお母さんを引っ張って声の反対方向へ向かって行った

逃げるんだ。逃げろと

お父さんは叫んでいた

お母さんも何かを察したのか私を抱えた

お父さんとはいつの間にかはぐれてしまった

お祭りの会場から少し離れている神社で、お母さんから降ろされた私

まだ状況を理解していなかった

お母さんは

「お父さんを探してくるからね。ここにいるんだよ。誰か怪しい人が来たら思いっきり叫びなさい。」

私を抱きしめながらそう言った

『どれくらいで帰ってくる？』

「お父さんが見つかったら、全速力で帰ってくるから。それまでは、ここで大人しくしてなさい。」

しばらく私を抱きしめてこう言った

「A。お母さんとお父さんはAの事が大好きだからね。愛してるからね。この愛でもっと抱きしめたい。Aもそんな人が出来たら、思いっきりその愛で抱きしめてみてね。」

この言葉の意味は、当時全くわからなかった

『？うん。私もぱぱとままが大好き！』

そう言うとお母さんは笑顔になってお父さんを探しに行った

でも、どれだけ待っても来なかった

私はあまりの不安に泣いてしまった

たくさん泣いた

周りには誰もいない

お母さん、お父さんはどこ？

どうして帰ってこないの？

その答えは、次の日にわかった

私を探しに来た警察の人が教えてくれた。

お祭りのあの時間

あの女性の叫び声は通り魔事件に巻き込まれた人の叫び声だった

お父さんはそれに気づいていた

だからお母さんに私安全な所に連れて行かせたんだ

警察の人に聞くと、お父さんは被害にあった人を助けに行ったらしい

お母さんも、わかってたのかな

やっぱりお母さんはお父さんの事も大好きだから

心配で探しに行っちゃったんだよね

お母さんもお父さんも、帰らぬ人となった

全部、お祭りに行きたいって言った私のせい。

あんなわがままを言ったから