【HQ】精神安定剤 【稲荷崎】

ー ページ16

”別れたい” っとハッキリ口に出したAに、彼氏は黙って頷くと、その場を離れた。


とぼとぼとした足取りで離れていく背を見て、侑は大きく舌打ちをかまし、石ころを蹴り飛ばした。


「何やねん、アイツ！ 謝罪のひとつもせんで帰るなんて、クッッッソやんか！」


「侑(ツム)、静かにせ。A、ほっとして寝てんねんで」


「寝と……はぁ！？ コイツ、さっきまで泣いとったやろ！？ 何で、急に寝てんねん！」


「だから、ほっとした言うとるやん。ええから、静かにせ」




治の胸に身を任せ、静かに眠るAの表情は曇りが無く晴れていた。



曇天だった空(心)に降り注いだ一筋の太陽の光(侑の言葉)が広がり、晴天の空に。




恐怖と引き換えに、休める心の在り処を。

侑の言葉は、Aの心に太陽を。

治の温かさは、Aに安心を。






「なぁ、治(サム)。 俺等は、まるでAに必要不可欠な精神安定剤みたいやな」

「……そうやな、侑(ツム)」



不安など減らし、精神状態を落ち着かせる。

飲めば心が楽になり、救われる。だが、服用し続けると毒となり、依存性が強く現れる。



”精神安定剤”

その言葉はまさに、”彼等” にピッタリなのかもしれない。




＿＿＿

レキソタン・セニラン

ベンゾジアゼピン系抗不安薬 (中間型)

抗不安作用

神経症の不安、緊張、恐怖、心身症の身体症候に適用。

副作用→依存性

【宮侑の想い】→←ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す