参拾漆＊三条の刀 ページ38
私はただひたすら走っていた。
「こんのすけぇぇぇ！！！打ち子を使わなきゃならんなんざ聞いてないぞ出て来い狐やろぉぉぉ！！」
"キエェエエェェェエエ！！！！"
とでも言いそうな形相で。
あの刀もあの刀もあの刀も、完治はしていなかったのだ。
「クッッソ！マジで何処だ！！打ち子でポンポンしてやるから出てきな！！！」
「だれにいってるんですか？」
不意に後ろから声が聞こえ、慌てて振り返る。
真っ赤な瞳に灰色がかった長髪を引きずっている刀がそこには立っていた。
「え…え？あの、え？？」
一体いつからいたのか、全く気づかなかった。
「あの、名前を聞いても」
「ぼくがきいてるんです。こたえてください、ひとのこ」
おっふ………恐ろしい刀だ。
ここで張り合えば間違いなく殺される。
大人しく従うしかないか…。
「えーっと、こんのすけを探しているので、こんのすけ…かな？今は」
「……どういうことですか？」
「つ、つまり、あの、手入れに打ち子を使うとは聞いてなかったので、少し文句を言おうかと」
「こんのすけに……なにをするつもりですか？」
ああああああ怖いよぉぉぉ！！おっかさぁぁん！！
短刀の中でもぶっちぎりで怖くない！？
別に刀を抜かれてるわけでもないのに無意識に死を覚悟してる自分がいるッ！！！
「な、何もしませんよ！打ち子でポンポンするんです！」
「するんじゃないですか」
「あ、確かに……」
チャキっと音がしたと思えば、彼は柄に手を添えていた。
「ひぃぃ！！？待って待って！別に怪我を負わせようとしてるんじゃなくて――」
「――今剣。そこで何をしているのだ？」
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作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
