【とうらぶ】微力だけど任せてください！！【ブラック本丸】 (ページ32)

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参拾壱＊夢の刀ページ32

青い羽織の人は刀を収めて何処かへ去っていった。

私は薬研に「もう大丈夫」と言って離してもらい、手入れ部屋へ入った。

そこには、厚、乱が座っている間にもう1人誰かがいた。

「その人は？」

「…いち兄。先に手入れしてもらおうかと思って」

私の問いかけに目を伏せながら乱が教えてくれた。

いち兄…夢にも出てきた名前だ。

確かに、その人の顔は見たことあるもので、空色の髪に血が少量こびりついていた。

「なぁ、さに…大将。いち兄は重症なんだ。いち兄を優先してくれ」

「頼む！」と厚に勢いよく土下座され、私は慌てふためいた。

「分かった！ちゃんと治すから！！取り敢えず土下座はやめて！」

「！本当か！？」

弾かれるように顔を上げた厚の瞳は、希望に満ち溢れていた。

さっきまでは疑惑で私を警戒しまくっていたのにな…と思いながらも、嬉しく感じてしまう。

"彼"に手をかざして、霊力を流し込む。

すると、徐々に傷口が塞がっていった。

「やった！成功した…！」

手入れの仕方はうろ覚えではあったが、薬研がフォローしてくれた。

「よ、良かったぁぁ～……」

乱は心底安心したようにへたり込む。

厚は彼の傍に駆け寄り、顔色を伺っては目尻に涙を溜めて喜んだ。

薬研は――……

「？薬研…？」

薬研は目を伏せてじっと正座していた。

名前を呼んでもピクリとも動かない。

様子がおかしいことに気づいた２人も薬研へ目を向けるが、その目も不思議そうにしていた。

彼らでも分からないのなら、私にも分からないな。

「薬研、どうしたの？次は３人が手入れする番だよ？」

「……大将。俺っちのこと刀解してくれ」

「え……？」

唐突に放たれた言葉に思考が停止する。