弐拾陸＊薬研、厚、乱 ページ27
というか、私はいつまで「胡座」「短髪」「娘」で区別をするんだろう。
そんな私の心中を見抜いたかのように、胡座の少年は口を開いた。
「そういや名乗ってなかったな。
俺っち、薬研藤四郎だ。兄弟共々、よろしく頼むぜ」
胡座をかいた自分の膝の上で頬杖をつく姿は、やはり様になっていた。
薬研に続くように男の娘は身を乗り出した。
「僕は乱藤四郎！ねぇ、僕と乱れよ？」
「みだっ…！？」
「ふふ、冗談だよ！」
楽しそうに微笑む顔はどうみても女の子だった。
でも、下には、アレが、付いてる。
「俺は厚藤四郎。兄弟の中だと鎧同士に分類されるんだ」
「へぇ…」
「理解してないな…」
そう言うと厚は頭を抱えた。
仕方がないだろ。詳しくないんだから。
私は痛む腹の傷を庇いながら正座した。
「知ってるだろうけど、改めて。
私はこの本丸の新しい審神者。よろしくね」
３人は頷くだけで、何も言わなかった。
「それで、この本丸を引き継いだ理由だけど…」
「あぁ、覚えてる。真相を暴いて、可能なら俺達を救いたい…だろ」
薬研は真顔だったが、その目は微かに期待を告げている。
黙って頷いて1人ずつ目を合わせる。
薬研、厚、乱……期待、疑惑、諦め。
気持ちはそれぞれのようだ。
「…あの、手入れしてからでいい？すごく落ち着かない」
先程からチラチラと視界に入る痛々しい傷口。
まずはそこを塞がないと、気になってしょうがない。
すると、厚は威嚇するように目を細めた。
「させると思うか？」
「そこは…強行突破かな」
今にも逃げ出そうと構える厚と乱を見て、私はニタリと口角を上げた。
そんな私の反応に、２人は息を飲む。
ぐっと足に力を入れたことを感じて私も構える。
そして、脱兎の如く走り出す２人。
私は傷口の痛みを霊力で塞ぎ、後を追いかける。
けれど流石短刀。すぐに見失った。
「ゼェ…ゼェ…何処行った…！」
私は壁に手をつけて一休みしていた。
会って間もない私には、２人が行きそうな場所など分かるはずもない。
かと言って、他の刀剣男士に聞くほど仲が良いわけではない。
「絶っっ対に逃がさないからな！！」
おっと思わず素が出てきてしまった。
取り敢えず、逃げ出さなかった薬研を先にしようと部屋に向かう。
……あ、場所が分からなくなってる。
いや、眼帯の人のときのように集中すれば分かるか。
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作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
