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大きく深呼吸してから、輸血パックに手を伸ばす。
その行動を見たAと不意に目が合った。
「 ありがとう 」
「 こちらこそ 」
注射器にセットをして
留め具を外す。
最期に、君への愛でいっぱいにしてやりたいけど
時間はあまり味方をしてくれない。
「 ねえ、○○くん 」
「 な、に? 」
「 また君と一緒に……空が、見たかったな 」
「 ……… 」
「 先に、待ってるね 」
「 その時は、結婚しよう。 」
目を細めて笑う君は、なんとも綺麗な花嫁だった。
白い腕に銀の針を静かに刺す。
生憎、扱い方は先生に教えてもらっていた。
もしも、の時のために。
ゆっくり、優しく、君は眠った。
音を立てずに。静かに。
すきだ。すき。誰よりも。この世界中の誰よりも。
「 愛してる 」
「 ん、俺も愛してるよ 」
やっぱり、最期まで君には適わないらしい。
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ちょこ - とてもよかったです! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Touka | 作成日時:2019年6月28日 20時