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ああ、君はきっと廊下で−−−
先程までいた愛しい彼のことを振り返ると
震える睫毛の先には水滴が零れそうなほど
溜まっていたのが目に見えていた。
君が泣くなんて、という驚いた気持ちと
ごめんね、という痛い気持ち。
2つが組み合わさって
正直キャパオーバーだ。
出会った当初は私が姉面をして
君の手を引っ張っていたのに
今は、男らしくなっちゃって死ぬとは別に寂しいような。
実は、1つ考えてることがある。
これはまだ○○くんにも言ってない秘密。
提案者は主治医の先生で
聞かされた瞬間、思考が止まってしまった。
君なら、了承してくれるかな。
安楽死を。
病の類によって抗えない死を進むより
自分の意思で最期を迎えたいと考えていたとき
主治医の先生は、私に安楽死というものを
持ち掛けてきたのだ。
別に今すぐにでも、という訳でもなくて
ギリギリまでは生きていたい。
病に悩まされて、苦しみながら死ぬなら
君と笑って死にたい。
そう、思った。
私の思考を止めさせるかのように
ガラッと、再び音が響く。
「 替えてきたよ 」
「 ねえ、○○くん 」
「 ?なに 」
「 安楽死って、どう思う? 」
「 どう、って… 」
戻ってきた君は、眼をほんのり赤く染めて
少しぐったりしているようにも見えた。
そんな君に "安楽死" の話をするなんて
私は悪魔だろう。
少しずつ目を見開き、察しさせてしまった。
それからまた静かに俯いている。
きっと、彼の頭の中で戦争でも起きているのだろう。
( ごめんね )
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ちょこ - とてもよかったです! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Touka | 作成日時:2019年6月28日 20時