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「ビールしかねぇわ。」
「あ、お構いなく……。」
リビングのソファで借りてきた猫のように縮こまって座る私に、ビールの缶を二つ持った宏光が近付いてくる。
咄嗟に返した返事は、何とも他人行儀なそれで。
微妙な顔をしながら宏光は、それをローテーブルに置いて私の隣に座った。
びくり、と肩が揺れた。
近いのだ、その距離が。
互いの肩が触れそうな距離で、プシュと宏光がプルタブを開ける。
「…………。」
「…………。」
ぎこちない空気が流れて。
チクタクと時計の秒針の音だけが、やけに大きく響いていた。
もう、どうしたらいいか本格的にわからない。
そうだ。
今日の私はずっとそうだ。
あまりに今までと違いすぎる宏光の行動と空気感に、戸惑ってばかりで。
そんな私の耳に宏光の浅い溜め息が聞こえる。
そちらを向けば眉間に皺を寄せた宏光の瞳とぶつかって、少しだけ困ったように笑ってビールの缶を傾けた。
こくり、と普段はあまり主張しない喉仏が上下する。
「どうした？」
「あ、いや……」
「迷惑だった？」
「え……？」
「いや、何でもねぇ……」
不自然な空気。
それを誤魔化すように、宏光は更にビールの缶を一気に傾けた。
ごくり、ごくり、と喉を鳴らして、宏光の中に吸収されていく黄金色の液体。
ほとんど空になったことがわかるような軽いアルミの音と共にローテーブルにビール缶が置かれて。
そのまま宏光は缶を置くために身体を前に倒した反動のように、ソファの背もたれに深く身体を沈めた。
同時に吐き出される深い吐息。
それは、ひどく熱を持っているようで。
ゆっくりと、背もたれに頭を預けたままに瞳が私を捉えた。
っ、
それを。
その瞳の色を。
どう表現したらいいのかわからない。
ひどく物憂げな儚さと、何もかもを焼き尽くすような熱が交錯する瞳。
眦に朱を宿したままに。
妖しく、甘く。
「ひ、ろ、みつ……？」
緩慢な動作でその手が伸ばされて、首の後ろに回される。
私は避けない。
避けられるわけがない。
引き寄せられる。
吸い込まれるみたいに。
近付く距離に、私は瞳を閉じて。
真っ暗になった視界で、近付く気配。
ゆっくりと。
けれど。
どれほどの時間だろう。
一瞬のようで、でもひどく焦れるようなその時間。
唇が触れそうなその距離に宏光の気配を感じるのに、一向に訪れない熱に瞼を押し上げればそこに。
唇に吐息のかかるような距離で、宏光が私を見ていた。
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とーか(プロフ) - にかみつばさん» 言葉にしてくださることが、また更に嬉しいです♪私は、みっくんにも少し狡くて不器用なところがあるだろうなって実は思ってまして…Masqueradeの宏があまりにも格好よすぎたので、違う彼を描いてみたかったのも本音です(笑)コメントありがとうございました♪ (2020年5月28日 12時) (
レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん♪一つ一つに丁寧にコメントくださってありがとうございますー♪そういう率直な感想とても嬉しいです(*´∀`)♪もちろん、好みだと言ってくださるコメントも嬉しいのですが、自分の中の彼は自分が感じるものなので色んな彼がいて当たり前で、それを (2020年5月28日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 1人の人を一途に愛する、優しい優しい北山くんで、読んで良かったなと思いました。シリーズで続きを書いて下さりありがとうございました。またとーかさんの作品を読めることを楽しみにしています。長々と失礼いたしました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 兄組話、Masqueradeの北山さんが好きでこちらも読ませて頂きました。正直私の想像する北山さんと違いすぎてイメージや感情移入しずらく途中で断念してしまってました。でもとーかさんの作品だしどうしても気になりラストまで読ませて貰いました。 (2020年5月28日 2時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
とーか(プロフ) - ふみさん» お姉……。ああ、もう他の人とは違う目線でニヤニヤしてるのが目に浮かぶわぁ……┐(´д｀)┌やめれ。生暖かい目で見んなーっ!!!(笑) (2019年9月9日 20時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とーか
| 作成日時：2019年8月24日 12時
