ICE DOLL 2

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まるで窓ガラスがスクリーンのようだ。


「綺麗だろ？」


「……うん。」


まるで、いつもそうしているかのような宏光の態度にどうしたらいいかわからなくなる。
完全にデートではないか、これでは。


「宏光……。」


「ん？」


「あの、これ……今日、何で……」


頭が回らず、しどろもどろで何を言いたいのかもよくわからない。
ただ、いつもと違うこの状況に戸惑ってしまう。
こういう変化に即対応出来ないのも年齢だろうか……？なんて、どうでもいいことを思った。


「ずっとしてみたかったんだよね……。」


「え？」


「Aとデート。」


「っ!?」


……デ、ート……

え、やっぱこれデートなの？
いや、え？ちょ、待って。

"デート"という単語に、元々少なかった平静を一気に失う。
宏光は私とデートしたかったのか、なんて冷静に受け止めることなんて出来ない。
だってデートだなんて。


「初デートだからな、気合い入れてみた。」


っ、

緩やかに笑いながら、鼻にかかった甘い声が静かな空間に響く。
一気に体内の血液が沸き上がるような感覚。
どうしたらいいかわからないままに、運ばれてきた料理は見た目にも舌にも美味しくて、自然と笑顔になった。
旬の素材をふんだん使われた創作フレンチは、心を溶かしていく。
美しく上品に少量ずつ盛り付けられたアートのようなお皿が、時間差で運ばれてくるコース料理。
まるで博物館のような調度品が並ぶ部屋と相まって、ひどく贅沢な時間だった。

そんなことに幸せを感じる私を見る宏光の瞳が、見たことがないほどに甘く穏やかで私はまたどうしたらいいのかわからなくなる。


「美味いな。」


「うん。」


ファンに見せるような、口いっぱいに食べ物を詰め込んでモグモグと咀嚼する姿ではなく、ゆっくりと静かに食事をしていくその姿は、宏光がきちんとTPOをわきまえた大人の男なのだと改めて認識させる。

こんな宏光は知らない。
緩やかな大人の余裕を纏った、こんな宏光はファンとしても見たことはないし、夜に見せる顔とも違う。
今夜は、知らない顔ばかりを見せられて、ホントに戸惑ってばかりだ。


「どした？」


「……、何でもないよ。」


その問いかける声さえも甘くて。
上手く笑えない。
あまりにも、今までと違いすぎる。
強張ってしまっている私の表情に宏光は気付いているのだろうか。
正直なところ、こんなにも何を話したらいいのかわからないなんてことは今まで宏光といて感じたことはない。

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