11.ちょっとだけ。 ページ11
撮影が終わってとしみつの家に帰宅。
ご飯はメンバーと食べてきたから、私はシャワーに入っている彼を待つ間、おつまみ程度のものを作っておく。
上がったら、すぐにビールをあけて、私の作ったものを食べる彼。
と「うますぎ」
こうやってボソッとつぶやいて、褒めてくれる彼が愛おしい。
そのあと私もシャワーに入る。
それはいつものことだった。
私が上がると彼のギターを弾く音が聞こえる。
と「〜グッバイ 君の運命の人は僕じゃない〜♪」
そんな歌なんか歌うから、少し不安になる事もあった。
基本的には生放送をしているから、きっとリクエストなんだけどね。
と「じゃあそろそろ終わりまーす」
そんな声が聞こえて、やっと私は物音を気にせず行動を開始する。
と「ごめん。ちょっと生放送してた。」
「大丈夫だよ」
と「もう寝る?」
「うん」
と「俺、ちょっと編集しようかな」
「うん」
同じ時間に布団に入ることもあまりない。
だから私たちは、一歩前には進めない。
「としみつ…」
と「ん?」
「編集待ってるから、一緒に布団に入ろう?って言ったら…嫌?」
と「嫌なわけないやん」
「じゃあ…待つ」
これが私からの精一杯だった。
と「待たなくていいよ。今行く」
私を気にしてか、彼は編集をせずに布団へ来る。
「ごめんね。」
と「なんで謝る?」
「編集…したかったのに…」
と「編集も大事だけど、Aの方が大事」
そういうと、彼は優しく私の横に入る。
しばらく沈黙のあと、
と「なぁ…」
「ん?」
と「うん…と…」
「なに?」
と「いや…あのさぁ…」
「狭い?あ、どこか痛いとか?」
と「違う」
「なら良かった」
と「抱いていい?」
「…いいよ」
と「ムードとか作れんくてごめん」
「今更そんなの望んでないよ」
と「はい、キスしまーす」
「それはムードほしい」
としみつはそれから優しく私の頬に手を当てて、触れるだけのキスから、深い深いキスをした。
「ドキ ドキする」
と「俺も」
私だけじゃなかったんだ。と少しホッとする。
と「A、好きだよ」
「私も好き」
その言葉で、としみつと私は初めて愛を交わした。
23年くらい一緒にいて…初めて見た表情だった。
愛おしい とはこの事だと、再認識した日だった。
「ねぇ、としみつ。」
と「ん?」
「ずっとそばにいてね」
と「当たり前やん」
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作者名:tee(てぃー) | 作成日時:2019年9月29日 9時