悪魔たちは今日も人間を愛す。 (ページ6)

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’４　恐怖の対象ページ6

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暗かった空がそろそろ明るくなるような時間。

石造りの床を一人の真剣な表情をしたメイドが歩いていた。

このメイドは先程、エメが出て行ったあとの
ファクティスとスクレのやり取りを聞いていた。

そのやり取りに今かなりそのメイドは悩まされているのだ。

・

－書斎－

「...どうして君は何も言わなかったんだい、スクレ。
　僕らはあの子の人間への忠誠心を育てなければいけないのに。」

ファクティスがエメの出ていった扉を見つめながらそう告げる。
その声色は少し怒っているようだった。

しかし、スクレは何も言わずにただ何かを考えているような表情をしていた。

スクレはエメとファクティスが話していた間何も言わなかったのだ。
ただ黙ってエメを見ながら口を噤んでいたのだ。

そしてしばらく間が空き、やっと口を開いたのだ。

「エメにとって、先程の私たちはどんな風に見えたのかしら。」

ファクティスは少し驚いたような顔をした。

妻の口からそんな言葉が出るとは思わなかったのだ。
だが、元の落ち着き払った表情にすぐ戻した。

「...僕らがエメにとって嫌な存在に見えていても、
　僕らは正しいことを教えるまでさ。それがエメのためになるんだからね。」

ファクティスは優しい笑顔でそう言う。

その笑顔は悪気など何もない我が子を思いやるかのような笑顔だった。

「そうですか。」

それにスクレは視線を床に落として短い返事をして、
それ以降何も言わなかった。

それを見て、ファクティスは付け加えるように穏やかな声色でこう言った。

「...それに、あの子が危険な事に巻き込まれないようにするためにもね。
　僕達は従っていれば安全なのさ。
　従ってさえいれば何も考えないでいいんだ。」

「............。」

スクレは何も言わず、立ち上がり書斎の重い扉を開いた。

「もうそろそろ寝ましょう。今日も仕事で疲れたでしょう。」

そう言い、スクレは書斎を颯爽と立ち去り暗い廊下の中へと消えていった。
ファクティスは静かに立ち上がりメイドたちのほうを見る。

「僕はもう自室に帰るから、君たちももう休みなさい。」

「「「畏まりました。」」」

メイドは一礼をし、ファクティスが書斎を出るのを待ってから部屋を立ち去った。

廊下を渡り帰っていくメイドたちは一人を除いて全員が真っ青な顔をしており、
震えていた。