’9 門 ページ12
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「あ、お姉ちゃん!」
翼をばたつかせてフェリが楽しそうに階段を降りる。
それを見てエメも少し微笑んだ。
「フェリ、準備は出来ましたね。メイドにもしっかりと出かける報告をしましたね?」
「うん!」
笑いながらフェリはそう言う。
地上に着いた足はバタバタしていて、今にも外へと走り出そうとしていた。
それを見て、エメはフェリに浮かれないよう注意をする。
「フェリ、私たちは人間のところへ行っても、
絶対に悪魔であることを知られてはならないのですよ。
ですから、そんな風に浮かれないようにして細心の注意を...
次から次へとエメの口から言葉が出てくる。
「もう!お姉ちゃん、そういうのはいいから早く行こう!」
「あっ、こら、フェリ!手を引っ張らないで下さい転んじゃいます!」
フェリは痺れを切らしたのか遂にエメの手を引っ張り、
屋敷で一番大きい扉を開け、庭園に出た。
外は快晴で、太陽が真っ青な空に浮かんで照らしていた。
「きゃっ、眩しい...。」
エメが小さく悲鳴を上げる。
エメは夜くらいにしか外に出ないので太陽に慣れていないのだ。
だが、肝心のフェリは姉の手をしっかりと掴み正門の方向へと向かうのであった。
屋敷の敷地は大きく、庭園を5分程飛んでやっと正門へと着いた。
「わぁ...。」
「フェリは正門を見るのは初めてでしたね。
私もこの門を最初に見た時は感動しましたよ。」
「この先に、にんげんがいる...。」
太陽に暖められた鉄の門は熱くなっていて触ると焼けるような痛みが走った。
だがそんな事は物ともせずフェリは薔薇や色鮮やかな植物が飾る門を触ったり、
見たりしていた。
「フェリ、行くなら早く行きましょう。昼になったら人が増えてしまいますよ。」
「はぁい。」
フェリが手を離すと、近くにいたメイドが門を静かに開ける。
門の向こうには森が広がっていて、その先に人の住む村があるのだ。
「じゃあ、行きましょうか。」
「うん!!」
エメがフェリの手を引いた時だった。
「ま、待ってよ!」
聞き覚えのある少年の声にエメとフェリが振り返ると、
羊のような角を持った少年、シヨンがこちらに向かって飛んできていた。
「わぁっ...。びっくりしたぁ。もうシヨン!脅かさないでよ!」
「ぼ、僕を置いていこうとするのが悪いんだろ!」
二人が目くじらをたてながら言い合う。
それをエメは呆れた顔で見ていた。
いつも通りの日々が壊れるまで
残り少しだということも知らずに。
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