’8 心配 ページ11
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村へ行くと決まってからエメとフェリはそれぞれ準備をしていた。
「エメお嬢様、どちらへお出掛けへ参られるのですか。」
茶髪の少し目元がつんとしているメイド、リィがエメに声を掛けた。
エメは少し笑顔になってリィを見る。
「あら、リィ。御機嫌よう。
...今から人間の村へと行くのよ。フェリの付き添いでね。」
そう言った時、リィは顔を暗くして黙り込んだ。
メイドと主人という立場といえど、
リィとエメはまるで家族のような関係だった為、
心配という言葉では表せられないほどの感情が湧き出るのだ。
エメはそれを見て角を少しだけでも隠すためのフードを被りながら微笑んだ。
「心配いらないわ。自分の身はしっかり守るし、フェリの面倒だって見るわ。
ちゃんと帰ってくるから、貴女がそんな表情する必要ないわよ。」
「...お嬢様のお婆様もそう申されておりました。」
「.........。」
二人の間に長い沈黙が流れる。
だが少ししてエメは口を開いた。
「私はお婆様みたいに安易に人に近づかないわ。それに私は人間より強いのよ。」
エメは笑いながらそう言う。
「いいから、早く後ろのリボンを結んで頂戴。
フェリを待たせる訳にはいかないのよ。」
「......畏まりました。」
そしてその後、エメが部屋を出ていった後もリィは心配そうな顔をして
笑う事は無かった。
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