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『…あの、私に出来ること、ありますかね』
「…できること?」
『思ったよりしんどそうなので、』
「…これ、解いてくれんか」
『え』
坂本さんは自身の手首に巻かれている紐を此方に差し出した。一瞬固まった私に眉を八の字に下げて、冗談じゃと笑った。信用していない訳では無い。でも躊躇ってしまったから、少しだけ悲しそうな顔をしたんだと思う。
「解かんでええ、…触れてもええか」
語尾が消えそうな程小さくなって、揺れる瞳と目が合った。黙って頷くと、坂本さんの側まで近寄る。縛られたままの長い腕が私の首に回って、抱き寄せられる。
反射的に身を強ばらせると、坂本さんの熱い息が耳にかかる。出そうになった声を口を噤んでこらえる。伝わってくる熱い体温にこっちまで心臓がうるさくなってくる。
「A…、」
『っ、ひぁ、ッ、?!』
ちゅ、と耳元でリップ音がなり、口付けられたのだとわかっても今の体勢じゃ体を話すことが出来なかった。掠れた声で何度も名前を呼びながら、耳の裏、首筋、頬に口付けされる。
擽ったい感覚に震えながらも声を我慢していると太腿になにか固いものが当たっていることに気づいた。私はピュアなどでは無いからなにこれなんて言って触れない。なんなのかわかっているからだ。
「っ、う…ッすまん、A、」
『え、?っい、』
ぢぅ、と首筋に刺されたよな傷みが走り、痕をつけられた。大きなため息が聞こえてくると私の肩に顔を埋める坂本さん。息を吸っては大きく吐く。
「…っはぁ、すまんの、もう平気じゃ、」
『…、は、ぃ』
この人、ほんとに商人か、ものすごく顔に出ている。平気じゃないんだろうな。と思いながら、強がっている男に恥をかかせるような女では無い。黙って開放された体を起こして元いた場所に戻った。
直に扉も出現するだろう。私は触れられ熱を持った場所に手を置きながら時間が経つまで坂本さんの方を見れないでいた。
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トろさん(プロフ) - こいちごさん» かしこまりました! (2023年1月3日 13時) (レス) id: 52ab68bbcb (このIDを非表示/違反報告)
トろさん(プロフ) - 月華姫さん» かしこまりました! (2023年1月3日 13時) (レス) @page32 id: 52ab68bbcb (このIDを非表示/違反報告)
こいちご - 阿伏兎くらいのでTwitterでお願いします!Twitter更新したら教えていただくと助かります💦 (2023年1月3日 9時) (レス) id: 6c6c3f5d98 (このIDを非表示/違反報告)
トろさん(プロフ) - こいちごさん» 甘さ加減によっては占ツクであげられないのですが、鳴かせろシリーズは坂本さんくらいので占ツクにあげます!阿伏兎まで行くとTwitterで公開になるんですが、 (2022年12月26日 9時) (レス) id: 52ab68bbcb (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - こんにちは♪またリク宜しいでしょうか?「高杉と手を繋いだまま幻想的な迷路(ミラー系かイルミネーション系かお任せ)を抜け出さないと出られない」をお願い致します(__)今年もあと少し。新年もよろしくお願いします(__) (2022年12月26日 8時) (レス) id: 8f77e3b2d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トろさん | 作成日時:2022年8月30日 20時