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『ひどいな、これは。』
通信室は、真っ赤に染まっていた。
ざっと見ただけでも6人。それ以外は逃げられたようだな。
人型の姿もない。やるだけ殺って逃走したか。
壁と床を真紅に染め上げ、苦悶の表情を浮かべるそれらには、すでに息はない。
遠征でたびたびこういう死体はあるが、やはり気持ちのいいものではないな。
逃げようとした背中を一突きにされている者もいれば、内側から食い破られたような者もいる。もはや顔の判別も難しい。
『呼吸器官の損傷、吐血、内臓もズタズタ。やはり内側から爆発でもしたような跡だな。』
トリオン体でなければ嘔吐していただろうか。
死体に傷をつけるのは好かないが、相手の能力を知るためには一番手っ取り早い方法でもある。
『…トリオン体のはずなんだがな。』
完全に痛覚を遮断しているわけではないが、トリオン体で頭痛というのは初めてだな。死体も、血も、見るのは久しぶりだ。慣れたと思っていたのだが、ここまでひどいものもなかなかないだろう。
『本部、こちら管。通信室に到着した。』
「…あ、Aちゃ…管隊員。よかった、繋がった。」
ようやくまともに繋がったかと思えば、気の抜ける声。サワムラさんか。
『…通信室だが、人型の姿はない。すでに逃走した模様。職員6名の死亡を確認。』
「……了解。件の人型ネイバーは現在、諏訪隊が訓練室に閉じ込めているわ。忍田本部長が現場へ急行。管隊員も急ぎ現場へ向かってください。」
本部長が現場に出るなんてな。訓練室か…ここからではだいぶ遠い。
『少し急がなくてはな。』
出口に向かおうとした足元に先程までまさぐっていた死体が目に飛び込む。
手を突っ込んだせいか、右手につけている手袋から服の袖口にかけて、赤く染まっている。トリオン体でもわかる生暖かい感触に顔をしかめる。
『死体に足を取られている場合ではない…か。』
引け目を感じる必要はない。
仕方のないことだと妥協する場面でもない。
仇を討ってやろうとも思わない。ただただ、不愉快なだけ。
『訓練室ね。』
自分の目的は敵を討伐することだけ。
死体に背を向け、出口に向かうまでの間で頭の中を整理する。すべてを割り切って訓練室に向かう。
今まで私がしてきたことと大して変わりはしない。
今まで奪ってきた者たちと大して変わりはしない。
なにも、変わりは、しない。
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迅さんラブ - 続編カモーン (2019年4月8日 23時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 続編来てー!! (2018年12月24日 15時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
り - 続編みたいです。 (2018年6月25日 18時) (レス) id: 68deff2841 (このIDを非表示/違反報告)
四季(プロフ) - みぃちゃん,mさん» 返信遅くなりました。本編は大した絡みもなくグダグダしてしまったので、短編の初っ端は出水で行きます。ある程度書いたら公開いたしますので、気楽にお待ちください。ありがとうございます! (2018年4月18日 7時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
四季(プロフ) - すずさん» 返信遅くなりました。ありがとうございます!無事完結いたしました。短編作成中ですので、そちらでは出水との絡みなどなど…書いていきますのでよろしくお願いします! (2018年4月18日 7時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:四季 | 作成日時:2018年2月17日 18時