【ヒプマイ】 貴方で終わりたい 2 【男主】

67: 観音坂独歩の世界 ページ28

寂雷から連絡をもらった後、一二三に伝え、すぐに見舞いに行った。


「ゆっぎー！！よがっだぁぁぁ！！」
「ひっ…ふみさん…？」


　確実に迷惑になる声量だが、事件が事件のため個室だった。独歩は一二三に注意しようかとも考えたが個室だからと目を瞑った＿恐らく言っても無駄だった＿独歩自身も雪切が重傷でないことに安心している。
　困惑する雪切に抱き着き騒いでいる一二三を流石に制し座らせる。


「ゆっきー、ほんっとにダイジョブ？あの碧棺左馬刻の部下にされたんっしょ…。あの野郎おれっちが＿」
「落ち着け一二三。でも、雪切くんが無事でよかった。いつ退院できるの？」


　小さく笑う雪切が、小さな声で答える。


「明後日、くらいには、多分…。」

「でもでも、よかったじゃん！これでしばらく先生独り占めっしょ！！」


　ハッとして、困ったようにまた、笑う。一二三と独歩は顔を見合わせた。


「…もしかして、喧嘩でもした？」
「あの先生を怒らせるって、ゆっきーなにしたの！？それとも先生がゆっきー怒らせたとか？？」


　一二三は知らないだろうが。独歩が電話をもらった時、明らかに声音が曇っていた。雪切が怪我を負ったという時に明るくなれるわけがないが、それだけではなかったのかもしれない。

　一二三と独歩は返答を待った。その時間にどんどん不安が募る。
　しばらく言い淀み、そして、言った。



「…いえ、なんでも、ないです。」



　目を伏せて笑う。
　その、今にも壊れそうな笑顔に独歩は＿



「そんな顔して大丈夫なわけ＿＿」
「大丈夫なわけないだろッ！！」
「うぇッ！？ど、どっぽ…？？」



　気づけばその細い肩を掴んでいた。困惑する一二三と雪切。



「そんな顔して大丈夫とか、言う、な…よ……あ…ごめん…。」



　独歩はハッとして手を離す。一二三と雪切が呆然と独歩を見ていた。それもそうだろう。普段＿少なくとも雪切の中では＿温厚な人間が急に怒鳴りだしたのだ。



「っび…びびった…でも独歩の言う通りだよゆっきー。一人で抱え込んでると独歩みたいになっちゃうよ！！」
「…どういう意味だ。」



　そんな二人の声に、雪切は泣きそうな顔をする。



「…俺が、悪いんです。俺が…だから、ごめんなさい……ごめんなさい。」



　何に対して謝っているのかわからないが、その後一二三と独歩が何と声をかけても、雪切は謝罪の言葉を続けるだけだった。

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